節税とフェラーリ(その2)~真逆の判断が出た事案
2022年10月20日節税ブログ その100
●節税とフェラーリ(その2)~真逆の判断が出た事案
■社長の個人的趣味のとらえ方
フェラーリに代表される高級車の税務上の取扱いについては以前にも、このブログで書きました。
フェラーリの経費性が認められた事案としては平成7年10月12日に国税不服審判所で下された裁決例が有名です。
細かい点はおくとして、注目すべき点は、税務署側の主張とそれに対する審判所の判断です。
【税務署側の主張】
イタリア製の高級スポーツカーで一般社会常識から見ても個人的趣味の範囲内のものであり、同族会社ゆえにできる行為であるから経費には認められない
【審判所の判断】
フェラーリが社長の個人的趣味であったとしても、現実に会社の事業の用に使用されていることが推認できる以上は、税務署側の主張を採用することはできない。
つまり、税務署がフェラーリは社長の「個人的趣味」であるから経費には認められないと主張したのに対し、審判所は「個人的趣味」であっても、「現実に会社の事業の用に使用」されている以上は経費に認められると判断した点です。
女性経営者が個人的趣味でピンク色のカワイイ軽四輪を選んだら、それは個人的趣味であるがゆえに経費性が否認されるのかというと、そんなことはありえませんね。それと同じ理屈だと思います。
■減価償却資産に該当するか否かの判断
さて、同じフェラーリでもまったく正反対の判断がされた事案がふたつありますが、先ず、最初にご紹介する例は、高級車で知られるフェラーリの中でも、特に高級なことで知られるフェラーリF50という車の話です。
この車は生産台数がわずか349台で、最初の発売は1995年、販売価格は日本円で5,000万円でした。それが今やオークション落札額が2億円から4億円はするとのこと(!)
で、この車で何が問題にされたかというと減価償却資産に該当するかどうかという点でした。
車などの資産を売った時は
販売価格-購入価格=販売利益
という計算式でいくら儲けたかを割り出し、その儲けをもとに税金の計算がされます。
しかし、車はその使用に伴って普通は価値が減少しますから、買った時の値段からその減価分(これを「減価償却費」といいます)を引くわけですね。そうすると上の算式は正確には
販売価格-(購入価格-減価償却費)=販売利益
となります。
■限定車だから減価しないのか、限定車でも減価するのか
200万円で買った車を100万円で売ったら、儲けは出ませんが、税務上の減価償却費が150万円だとすると
100万円-(200万円-150万円)=50万円
となって販売利益は50万円出てしまいます。
この事案では、納税者側は、車は限定車で減価しないのだから、当初の購入価格で販売利益を計算すべきだと主張しました。しかし、審判所は限定車とはいえ、道路運送車両法上の登録がされ、ナンバープレートをつけて公道を走っていたという理由で次の様に判断しました。
本体車両が歴史的価値又は希少価値を有して代替性のないものであるとまではいえない
つまり、いかに高級車であれ、普通に道路上を走っている以上はその価値は減少するから、購入価格から減価償却費を控除して利益を計算すべきとの判断を下したというわけです。
しかし、ほとんど同じころにやはりフェラーリについて、正反対の判断がなされた裁決例があります。
■何をもって価値が下がる-と判断するのか
こちらは500台以下の限定生産で、購入者も限られ、価格は8,000万円をこえるものだったそうですが、審判所は希少価値が高いことを理由に
減価償却資産には該当しない
という判断を下しています(ちなみにこの事案は減価償却資産に該当するか否かではなく、別の争点で争われました)
資産は通常、その使用や時の経過により価値は減少していきますから、それを「減価償却費」として毎期、費用に計上することが税務上、認められているわけですが、条文の上では
時の経過によりその価値の減少しないものを除く
となっています。ですから、当初、数千万円で買った車が、数年後にそれをはるかに上回る価格で売れるとしたら、確かに、価値は減少しない、したがって、減価償却費は計上できないという考え方は成り立つでしょう。
しかし、価格は需要と供給の関係で上がることはあっても、走るという車の機能面での価値は下がることは間違いないのではないでしょうか。
それはともかく、審判所は同じような高級車についてまったく逆の判断を下したわけです。
■常にあるリスクを意識する必要性
個人的には、一連の判断はいかにも“ご都合主義”であると思います。
しかし、行政がそういう判断をする可能性は常にあるし、裁決(国税不服審判所の判断)がいったん出てしまえば、次は裁判に訴えるしかありませんが、まぁ、普通はとてもそこまではいきません。
ですから、最初に「個人的趣味」であっても、経費性が認められた事案をご紹介しましたが、かといって常にそういう判断がなされる保証はどこにもない-ということです。
納税者の主張は主張として強くすべきですが、と同時に、いかなる場合においてもリスクはあることを決して忘れてはいけないと考えます。
「これは、税務上認められるのか・・・」とその判断に迷われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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