節税と専従者給与~他に仕事を持っていても専従者給与が認められた裁決例
2024年06月08日節税ブログ その120
●節税と専従者給与~他に仕事を持っていても専従者給与が認められた裁決例
■専従者給与が認められる要件
個人事業者で専従者に給与を払って現に節税をしている、あるいはこれからしようと考えている事業者はたくさんおられると思います。
もちろん、そのこと自体は税務上の要件にかなってさえいれば良いわけで、何ら問題はありません。
税務上の要件というのは
・青色事業者であること
・あらかじめ届出書を提出していること
・給与の額が専従者の仕事の内容等から見て「適正」であること
です。
ただし、もうひとつ重要な要件があります。それは
その事業に専ら(もっぱら)従事していること
です。だからこその「専従者」なのです。
■「専ら従事する」とは具体的に何なのか?
専ら従事するとは、年間を通して6ヶ月以上その仕事に従事していることーと法律上はなっています。
ですから、たとえば奥さんが「夫の仕事を手伝っています」と言っても、別の会社に9時から5時まで勤めていたら、「専従者」にはなれないというわけです。
しかし、奥さんが別の会社の代表取締役でありながら、一方で専従者としての給与が夫の事業経費に認められた裁決例があります。
事例では
夫は個人医院を営む小児科・内科の医師で、奥さんは、その事業者によれば1日平均5時間程度、夫の個人事業にかかる経理事務に従事し、その他にも労務管理や資金繰りの業務もこなしていました。
一方で
奥さんは不動産賃貸業務を営む会社の代表取締役もしていました。
税務当局は両方の事情を様々検討した結果、奥さんは夫の事業に専ら従事しているとは認められないとして専従者給与を必要経費に認めませんでした。
しかし、国税不服審判所は最終的に奥さんの専従者給与を必要経費に認めました。
■他に職業を有する者の専従者給与が認められた理由
審判所はその理由を
請求人(医師である夫)の妻甲がA社(不動産賃貸会社)の代表取締役として、同社が営む不動産賃貸業において経常的に従事しなければならない事務は、振込入金された家賃の管理程度であって、その事務量はわずかであり、このことからすると、請求人が営む事業(小児科・内科医業)に専ら従事することの妨げにはならないと認められるから、甲は、他に職業を有する者ではあるが、所得税法施行令165条2項2号のかっこ書に規定する者に該当すると判断するのが相当である。(平成16年6月28日)
としたのです。
もちろん、これは奥さんの会社が営む不動産賃貸業がいわゆる「不労所得」と言われるように、経営者若しくは従業員に日常的な長時間の拘束を必要としない事業内容であったことが大きく、それ以外のたとえば小売業や製造業などではこうはならなったでしょう。
とはいえ、たとえば奥さんが事業主である夫の仕事を手伝っていても、その他に仕事を持っていれば、無条件に
専従者給与は当然認められない
と考えるのではなく、他の仕事の「量」がどのくらいなのか、その仕事が夫の仕事に専ら従事することの「妨げ」に本当になるのかどうか、少しでも今日紹介した裁決例に類似する点があれば、そのあたりの検討はやっておくべきではないでしょうか。
専従者給与についてじっくりと話を聞いてみたいと思われたら
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さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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