節税と賞与の支給時期~期末賞与か賃上げ促進税制か
2022年11月25日節税ブログ その101
●節税と賞与の支給時期~期末賞与か賃上げ促進税制か
■決算賞与の節税効果
決算期が近づいてきて思わぬ利益が出そうだとわかった時に、従業員に決算賞与を出して節税をはかろうとすることはよく行われます。
もちろん、賞与を支払えば、その分現金は出ていきますから、税金が減ると同時に現金も減ります。
これを、数字を使って具体的に説明すると以下の様になります。決算期は仮にN期とします。
【N期・賞与支給前】
当期利益 1,000万円
法人税等 300万円 注)税率30%
【N期・賞与200万円支給後】
当期利益 800万円
法人税等 240万円 注)税率30%
【N期・節税額】
300万円-240万円=60万円
■節税効果はあっても現金残高は・・・
ということで、節税効果はありましたが、では、現金残高はどうでしょう。
【N期・現金残高】
・賞与支給前 当期利益1,000万円-法人税等300万円=700万円
・賞与支給後 当期利益 800万円-法人税等240万円=560万円
差引現金残高減少140万円 (賞与支給額200万円-節税額60万円)
つまり、節税目的で賞与を200万円支払って60万円の節税に成功したものの、現金残は140万円減ってしまったというわけです。
ただ、決算賞与をもらって喜ばない従業員はいませんから、賞与を払うことによって、従業員のモチベーションが上がって、会社の業績が改善すれば、一概に悪い節税とは言い切れません
さて、今回は、同じ賞与を支払うにしても、もう少し効率的なやり方があるというお話を紹介します。
■賃上げ促進税制を利用した場合
法人税には「賃上げ促進税制」(旧・所得拡大促進税制)といわれる制度があります。
これは、今期の給与総額が前期の給与総額の101.5%以上である場合(中小企業)に
給与の増加額×15%
を今期の法人税額から引くことができるという制度です。
そうすると、先ほどの例で決算賞与の200万円をN期には出さずに、翌期のN+ 1期にまわしたとします。給与総額は決算賞与分を除いてN期も、N+1期も同額だとすると給与の増加額は200万円となります。N期に決算賞与を出してしまった場合は今期N+1期の給与総額は前期N期の給与総額以下となりますからこの制度は使えません。
ちなみに、利益は2期ともに決算賞与支出前でともに1,000万円だったとします。
【N+1期・賞与支給前】
当期利益 1,000万円
法人税等 300万円 注)税率30%
【N+1期・賞与200万円支給後】
当期利益 800万円
法人税等 240万円 注)税率30%
ここまではN期と同じです。
■賃上げ促進税制は所得控除ではなく税額控除制度
しかし、N+1期は給与総額が200万円増えたことで先ほどの「賃上げ促進税制」を使うことができます。そうすると
【N+1期・賞与200万円支給後】
当期利益 800万円
法人税等① 240万円 注)税率30%
税額控除額 ▲30万円 給与増加額200万円×15%
法人税等② 210万円
【N+1期・節税額】
300万円-210万円=90万円
【N+1期・現金残高】
・賞与支給前 当期利益1,000万円-法人税等300万円=700万円
・賞与支給後 当期利益 800万円-法人税等210万円=590万円
つまり、同じ様に決算賞与を200万円出す場合でも、支給時期を変えるだけで現金残高は30万円改善するというわけです。
利益が出たから従業員に還元したいという場合でも、賞与の支給時期を少し変えるだけで、現金残高を改善できる場合があるーということをぜひ覚えていただきたいと思います。
賞与の支給時期についてもっと詳しくお聞きになりたいと思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
にお問い合わせください。
〒819-0002 福岡市早良西区姪の浜4-22-50クレインタートル弐番館801
――――― お問合せ先は ―――――
TEL092-892-3888/FAX092-892-3889
前のブログ記事へ | 次のブログ記事へ |