節税と所得の分散~法人と個人の取り扱いはどう違う?
2021年02月12日節税ブログ その70
●節税と所得の分散~法人と個人の取り扱いはどう違う?
■所得の分散は法人の専売特許?
法人の節税対策として、よく話題になるのが「所得の分散」です。
「所得の分散」とは、たとえば、社長ひとりが給与1千万円もらうのではなく、その1千万円を奥さんやその他の家族に分けて、つまり、1人当たりの給与の額を少なくして税金を安くするという節税手法のひとつです。
これについては
法人化すると「所得の分散」が可能になる
といった解説を時々目にしますが、この説明には多少誤解があります。
先ず、個人事業では事業主に対して経費として給与を支払うことはできません。一方、法人では社長への給与は経費として認められます。ここは個人事業と法人の大きな違いです。
しかし、事業上の儲けを、事業主若しくは社長ひとりで独占するのではなく、家族に分散することは、決して、法人だけの専売特許ではありません。
個人事業でも、事前に届出さえ出しておけば、同居の家族に給料を払うことはできます。
同居していない家族(子供や両親など)であれば、届出書の提出さえいりません。
大事なのは、労働の実態が本当にあるかどうかです。
労働の実態がなければ、当然ながら、法人でも家族に対して給料を払うことはできません。
実際に働いていない、あるいは経営に参加していない家族に給料を払えば、それは架空人件費ですから、経費には当然、認められませんし、「重加算税」という、まさに重いペナルティの対象となります。
■奥さんに対する給与 個人と法人はここが違う
では、奥さんが午前中は夫のところで事務の手伝いをし、午後からは近くのスーパーでパートの仕事をやっているーという場合はどうでしょうか。
この場合、法人であれば午前中の仕事に対する給与は経費として認められます。
しかし、個人事業では、残念ながら、奥さんに対する給与は経費には認められません。
なぜか?
個人事業で家族に対する給与が経費に認められるのは、「専従者」に対するものだけだからです。
「専従者」とは
専ら(もっぱら)事業に従事する者
という意味です。具体的には、年間を通じて6か月以上、その事業に専念できなければいけません。
ですから、1月から5月までは他の会社で仕事していたが、6月から12月までは、夫の仕事に専念していましたという場合は、支払った給与は経費に認められます。
しかし、上の例の様に、午前中は夫のところで事務の手伝いをしていたが、午後からは近くのスーパーでパートの仕事をやっていたという場合は、たとえ、夫のところで仕事をしていた時間が年間を通じて6か月以上であったとしても、その間
専ら(もっぱら)事業に従事していたことにはならない
という理由で、支払った給与は経費に認めてもらうことができません。
■子供に対するアルバイト代の支払い
では、専従者が子供の場合はどうでしょうか?
成年、未成年に関わらず子供でも、正当な労務の提供さえあれば、支払った給与は経費に認められます。
ただし、これも個人事業と法人では取り扱いが違ってきます。
個人事業で認められるのは、その事業に専ら(もっぱら)従事していた場合だけです。したがって、学生で夏休みの間だけ父親の仕事を手伝っていました―という場合は、残念ながら認めてもらえません。
その点、法人ではそういうしばりがありませんから、いわゆる短期のアルバイトであっても、経費に認められます。
■役員となるための年齢制限
では
未成年の子供を法人の役員にすることができるかどうか
という点ですが、会社法という法律の331条に、役員になることができない、いわゆる「欠格事由」が様々規定されています。しかし、その中に「未成年者は役員になれない」といった規定はありません。
ですから、親の同意さえあれば、未成年の子供でも役員にはなれます。
ただし、実務上、役員は登記の際、印鑑証明書を必要としますが、15歳以上でなければ印鑑証明書は発行してもらえません。したがって
15歳未満の子供は役員にはなれない
ということになります。
幼いころから、実地に会社経営を学ばせるという意味で、未成年者を役員にするという選択肢はあり得ると思いますが、役員としていったん登記されると未成年者であっても役員は役員ですから、責任面においては成年者と何ら変わることがない―ということになってしまいます。
また、いくら将来の社長候補といえ、未成年の子供を役員にした場合、役員報酬の適正性は税務署からよりきびしく見られるーということも決して忘れてはならないと思います。
所得の分散についてもっと詳しくお聞きになりたいと思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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