節税と資格取得費用~経費とするための3つの要件
2020年12月15日節税ブログ その66
●節税と資格取得費用~経費とするための3つの要件
■資格取得費用の基本的な考え方
仕事上の必要から会社が費用を負担して、従業員等に「資格」を取得させることがあります。
この資格取得費用は税務上、どう取り扱われるかというと
会社や個人事業主の業務遂行上の必要に基づくもので、役員又は使用人にその職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品はこれらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない
(所得税法基本通達36-29の2)
となっています。
もともと、「資格」というのは、個人のいわば「財産」ですから、それに係る費用は、本来、個人が負担すべきものであって、それを会社や事業主が負担した場合は、それはその資格挑戦者に対する給与になりますよ-というのが税務の基本的立場です。
もちろん、給与とみなされても、経費であることに変わりはありませんが、源泉徴収の必要が出てきますし、消費税の課税仕入れにもなりません。役員の場合は、賞与とみなされて全額が経費として認められなくなってしまいます。
しかし、仕事上の必要から会社や事業主が負担するものについては、給与課税とせず、事業上の費用と認めましょうというのが、上記通達の趣旨です。
■3つの要件をクリアしているか?
要件は
- 業務の遂行上の必要なものであること
- 職務に「直接」必要な技術若しくは知識であること
- 費用として適正なものであること
の3つです。
先ず、「業務の遂行上の必要」なものかどうかについては、たとえば、運転免許取得ための費用を会社が負担した場合で考えると、その会社が、運送業やタクシー会社であれば、「業務の遂行上の必要」であることは明らかです。
これから車を使った仕事が増えるから、まだ免許を持っていない従業員のために、今のうちに自動車学校の費用を払っておこうという場合も認められるでしょう。実際の仕事が決まってから、「さぁ、免許を取りに行こう」では間に合いませんからね。
次は、職務に「直接」必要な技術若しくは知識であること。ポイントは「直接」必要かどうかです。
これも免許取得費用で考えると、運送部門のドライバーに係る費用は当然認められるとして、では、車を運転することのない管理部門の従業員にも認められるかというと、少なくとも「直接」必要との主張は通らないと思います。
ただ、「直接」必要かどうかの判断は、意見が分かれることがあります。
■「直接」必要かどうかの判断基準
私が、実際の税務調査で調査官から指摘を受けた事例です。
その会社は、いわゆる、大型機械の修理を生業とする会社で、いわゆる同族会社ですが、問題となったのは、社長の親族である若い社員のために支払った自動車学校の費用が、給与課税の対象にならないか―という指摘内容でした。
税務署の調査官の主張は、確かに会社の業務に車の運転は必要だが、免許書は会社の仕事だけに必要なものではない、休みの日のドライブや買い物にだって使えるのだから、職務に「直接」必要な技術とまでは言えない-というものでした。
しかし、その若い社員は入社して間がなく、当然、経験も技術もありませんから、先輩社員と現場に行っても、まだまだ、彼一人では仕事にならない状態でした。
そうすると、彼のできることは先輩社員や修理道具を車に乗せて、遠い現場まで、行きも帰りも車を運転することが当時の主たる職務となっていたのです。
だから、彼の運転免許取得費用は、職務に「直接」必要な技術と主張し、結果的にその主張は認められました。
ただし、この主張がいつも認められるという保証はありません。
たとえば、その若い社員が技術も経験もある社員で、他の社員と同じ様に仕事ができ、行き帰りの運転は全員が交代でやっていたとしたら、果たして、私の主張がすんなり認められていたかどうか・・・。
■費用として適正かどうか
最後の要件は、費用として適正なものであることです。
これはどんな資格や講習会等であれ、必要な費用の“相場”というものがありますから、それから大きく外れたものでない限り問題となることは少ないはずです。
しかし、たとえば、英語が必要とされる職場で、国内の英会話学校に支払った費用は当然、必要経費として認められるとして、では、海外の高級ホテルに泊まりながら英語のレッスンを受けるといった場合の費用はどうでしょうか?
この様な場合は、短期間で英語をマスターする必要があり、しかも、海外の方がより実践的な英語を身に着けることができるといった特別の理由がない限りは、むずかしいかも知れませんね。
税務上の資格取得費用について詳しくお聞きになりたいと思われたら
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