節税と不動産投資の赤字~不動産投資の節税効果とは?
2020年10月24日節税ブログ その63
●節税と不動産投資の赤字~不動産投資の節税効果とは?
■不動産投資で節税ができる!?
不動産投資の広告を見ていると、よく「不動産投資で節税ができる」といったうたい文句を目にすることがあります。
これは一体どういうことでしょうか?
節税のカラクリは簡単で、不動産所得の赤字と給与所得や事業所得の黒字を相殺して、税金の対象となる所得を減らして、給与所得者なら源泉徴収された所得税を取りもどす、事業所得者なら、申告書の課税所得を減らして税金を安くする-ということです。
たとえば、サラリーマンで年間の給与収入が500万円だったとすると、額面から「給与所得控除額」を引くので税金の対象となる金額は356万円となります。しかし、そのサラリーマンが不動産投資をやっていて、赤字が50万円だった場合、ふたつを相殺して(税務上は、これを「損益通算」といいます)、税金の対象となる金額は306万円になります。
ですから、税金は確かに安くなります。
しかし、不動産投資もひとつの商売ですから、本来、赤字では困るわけです。
では、なぜ、業者は赤字を出して税金を安くしましょうというのでしょうか?
■赤字が発生する理由
ここで出てくるのが「減価償却費」の話です。
不動産投資で購入する建物は買った時の一時の費用とすることができません。全て税法で決められた「耐用年数」にわたって少しずつ費用化していくことになります。
耐用年数は新築の場合
・鉄骨鉄筋の建物 47年
・重量鉄骨の建物 34年
・木造の建物 22年
となっています。
中古の場合は一定の算式に基づいて計算した「見積耐用年数」で償却していきます。
減価償却費というのは、年数の経過に伴って、建物の価値の減少を機械的に計算していくだけですから、費用としては計上しますが、現金は出て行きません。
たとえば、取得価額3,000万円の新築マンションを買ったとすると、耐用年数は47年で、1年あたりの償却費は66万円になります。
注)取得価額に含まれる土地部分は無視しています。
この現金が出て行かない費用を計上できるから、赤字でも困らないし、税金もやすくなりますよ-という理屈です。
■初年度に発生する償却費以外の費用
また、物件を購入した初年度には仲介手数料、登録免許税、抵当権設定費用、不動産取得税といった様々な費用が出て行きます。相場は中古物件で8%、新築物件で5%程度です。もちろん、こちらはお金が出て行きます。
3,000万円の新築物件だと150万円程度です。
利回り5%で賃料収入が150万円だとすると、初期費用150万円と償却費66万円で216万円ですから、差し引き66万円の赤字ということになります。
しかし、次の年度からはどうでしょう。当然、初期費用はもう出ていきません。
賃料収入150万円に対して償却費は66万円ですから、この段階で84万円の黒字で、その他の経費をこれから引いても、最終的には黒字になることが多いはずです。
つまり、「不動産投資で節税ができる」のは、せいぜい物件を購入した初年度ぐらいで、それも、減価償却費の計上というよりも、仲介手数料や登録免許税といった、実際にお金が出ていく経費の支払いがあるからだといえます。
■費用にならない借入金元金の返済
また、減価償却費自体は確かにお金の支出はありませんが、物件を借入金で購入した場合、借入金の返済で確実にお金は出て行きます。借入金で費用になるのは利息だけです。元金の返済は費用になりません。
鉄骨鉄筋の建物の耐用年数は新築で47年、償却率は約2%です。投下資本の2%が費用になるだけですから、税率を10%とした場合、キャッシュは償却しない場合に比べて、わずか0.2%多く残るだけです。これに対して借入金は、たとえば20年で返していくとすると率にして5%は確実にキャッシュが出て行きます。
だから一般に、不動産投資は借入金返済が済むまでは、キャッシュはそんなにたくさんは残りません。
「不動産投資で節税ができる」
といううたい文句を聞くと、何か今まで給与などから取られていた税金が、これからずっと安くなる様なイメージをいだかれる方がおられるかもしれませんが、残念ながらそんなことはありません。
節税することは大事ですが、節税が投資の目的となってしまっては、本末転倒ではないでしょうか。
不動産投資の赤字についてもっと詳しくお聞きになりたいと思われたら
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