節税と物件調査費~物件調査費はどこまで認められるか
2020年09月24日節税ブログ その61
●節税と物件調査費~物件調査費はどこまで認められるか
■物件調査費とは
不動産投資に伴って支出する経費の中に物件調査費と呼ばれるものがあります。
たとえば
・新しい物件を見に行くのに要した交通費や宿泊代
・物件の取得に関連して業者を接待したときの飲食代
・物件周辺の住環境や人の流れなどの調査に要した費用
といったものが挙げられると思います。
さて、これらの費用は当然、現に賃貸の用に供している物件に係る費用ではなく、これから賃貸の用に供する予定の物件、若しくはそれらの物件を探すために支出される費用です。
では、これらの費用はそもそも、不動産所得の費用となり得るのでしょうか。
所得税法は必要経費について、「不動産所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額」と規定していますから、これには該当しません。
しかし、続けて「その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする」(所得税法第37条)と規定していますので、後段の説明から物件調査費も必要経費に認められると読めます。
問題はその内容と金額です。
■物件調査費の範囲は意外と広い?
物件調査費というとその範囲はけっこう、広くとらえられることが多いと思います。
遠く離れたA市のBという名のマンションを業者から教えてもらったので見に行ったというのであれば、経費性は明確ですが、同じA市のC駅周辺が、最近人気の地域なので、とりあえず行ってみたという場合はどうでしょうか。
また、今はF県に住んでいるが、奥さんの実家があるN県の物件をいくつか見に行った場合の交通費は、果たして、実態は里帰りの費用なのか、物件調査費なのか―判断に迷います。
物件調査費に関連しては平成23年3月25日にひとつの裁決(国税不服審判所の判断)が出ています。
■納税者の判断と税務署の判断
納税者の主張は
不動産賃貸業において、収益を向上させるためには、賃貸の見込める不動産物件をいかに安価に購入できるかが極めて重要なポイントとなり、不動産賃貸業を営む以上、かかる物件調査を継続することが大事であるから、業務の一環としての調査費用(接待交際費、タクシー代等)を必要経費に算入すべきである。
というものです。
これだけ読むと、納税者の主張は至極当たり前のものの様に思えますが、結果的には、この事案の調査費用は必要経費として認められませんでした。
理由は以下の通りです。
たとえば、納税者は物件調査のために自分の車を使っていますが、年間の走行距離7,000Kmのうち、プライベートに使ったのは100Km程度だということで、車に係る費用(減価償却費、損害保険料、租税公課等)のほとんどを調査費に計上しています。
また、接待費やタクシー代の他にも、スーツ代、自転車代、コンタクトレンズ代なども必要経費として計上していました(!)
■必要経費の立証責任
必要経費についての立証責任は、原則的には税務当局にありますが、その税務当局が具体的な証拠に基づき一定額の経費を明らかにして、それが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合には、これを超える額の必要経費は存在しないものと事実上推定され、これを上回る経費の存在を主張する場合は、その立証責任は納税者側にあると、この裁決の中で述べられています。
結局、税務当局がこの事案における物件調査費を否認したのは
・物件調査費の具体的な内容が何ら明らかにされなかったこと
・物件調査費その他の費用が不動産所得の総収入金額に相当するほど多額であったこと
が原因でした。
ということは、この事案の判断を逆にとらえれば、物件調査費は
・具体的な内容が明らかで
・金額が適正であれば
当然ながら、経費として認められるということがわかります。
後は、それをどう合理的に説明できるか、どう具体的の証拠を用意しておくか―ということにつきると思います。
果たして、この支出が将来の物件取得に役に立つといえるかどうかーその判断に迷ったら、ぜひ、今日のこのブログの内容を思い出していただきたいと思います。
物件調査費の計上についてもっと詳しくお聞きになりたいと思われたら
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