節税と法人化~そのメリット、デメリットは本当か?
2019年01月06日節税ブログ その18
●節税と法人化~そのメリット、デメリットは本当か?
■何が本当で、何が本当でないのか?
個人事業を法人化する際には、単に「節税」という事だけではなく、社会保険はどうなるか、株式会社がいいのか、合同会社がいいのかーなど検討すべき点はたくさんあります。
そのため法人化については、メリット、デメリットを含めて多くのことが書籍やネット上で語られています。
ところが、中には
・・・ン?
と首をかしげたくなるような内容のものも時々、目にすることがあります。今日はそのお話です。
■メリットの1 法人化すると社会的信用が増大する
確かに、世間一般では個人事業よりも会社組織の方が信用力はありますが、昨日、今日、起ち上げたばかりの、しかも、社長と従業員1人とか2人の会社が、個人事業に比べて、格段に社会的信用が良くなるかといったら・・・ん~~、どうでしょうね?
特に、会社名とは別に、いわゆる屋号で商売をするような、たとえば、飲食店や美容室の場合は、そもそも会社名は表に出ないような場合も多々ありますから、
そんな場合は、ますます、法人化で社会的信用が増すという事は考えられませんね。
■メリットの2 法人は「有限責任」だが、個人事業は「無限責任」である
「不幸にして、経営が行き詰った場合、個人事業では事業主が債務の支払についてすべての責任を負うが、法人の場合は出資金の範囲で済むから法人が有利」といった話もよく目にします。
しかし、これは「出資責任」と「経営責任」を完全に混同した誤りです。
「出資責任」であれば、確かに株主は出資金以上の責を問われることはありません。しかし、それは「株主」としての責任です。
中小企業の「株主」は、ほとんどの場合、同時に「経営者」でもありますから、仕入代金を払えないような場合は、個人財産を処分してでも全額の支払いを迫られます。決して、出資金の範囲で支払えばそれ以上責任を追及されないといったことはありません。
■メリットの3 法人は所得の分散ができるから有利
「法人の場合は、利益を親族などへ給与という形で分散できるから、税金対策上、有利」という話もよく聞きます。
確かに、社長の親族(配偶者や子供、両親といった人たち)が、実際に会社の事業に従事しているのであれば、その通りです。
しかし、これは法人にだけ認められた特典ではなくて、個人事業の場合でも「青色専従者給与」として税務署に届出を提出すれば、自分以外の同一生計の親族に「給料」を出すことは可能です。
また、「青色専従者」は配偶者ひとりに限られるわけではありません。事業に専従していれば子供や親でも給料を支払うことはできます。
別生計であれば、届出の必要もありませんから、親族であっても給与を支給することに何ら問題はありません。
■デメリットの1 法人化すると決算が複雑になる
確かに、法人も規模が大きくなれば、決算手続きもかなり複雑になって、会計の「専門家」ではない「経営者」ひとりの手に負えなくなることは事実です。
しかし、いくら法人化したとはいえ、実質的に個人事業と変わらない段階での会社の決算が、個人に比べ、それほど複雑になることはありません。
もちろん、全く同じというわけにはいきませんが、少なくとも、法人化したことによるデメリットと呼べるほどのものでないことだけは確かです。
■デメリットの2 法人化すると複式簿記が必要になる
複式簿記というのは、簡単に言うと、すべての取引を借方(かりかた)と貸方(かしかた)というふたつに分けて帳簿に記録していく経理の方法です。
法人化すると、日々の経理処理を複式簿記でやらなければならないのは事実ですが、これは、個人事業で「青色申告特別控除」(65万円控除)を受ける場合でも全く同じです。
会社だけに要求されるものというわけではありません。
■デメリットの3 法人化すると決算公告義務が発生する
決算公告というのは自分の会社の決算書を世間一般に公表することで、方法としては
①新聞に発表する
②官報に掲載する
③自社のホームページに発表する
という3つがあります。これをやらないと実は100万円以下の罰金ということになっています。
法律で決められたことですから、もちろん、大企業はやっています。
じゃあ、中小企業は?
ほとんどがやっていません。明らかな法律違反ですが、事実上、ほったらかしの状態です。罰金を払わされたという話も聞いたことがありません。
法律で明確に規定されている以上、さすがに「やらなくてもいい」とは言えませんが、今のところ、行政側に打つ手がないという事だけは、はっきりしているようです。
そろそろ法人化をしようか・・・とお考えでしたら
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さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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