節税と社長の健康~健康維持の費用はどこまでが経費?
2023年05月26日節税ブログ その107
●節税と社長の健康~健康維持の費用はどこまでが経費?
今日のテーマは経営者の健康若しくは健康維持に関する費用のお話です。
テーマは
・健康診断費用
・人間ドック
・マッサージ費用
・健康器具
・スポーツクラブ
・健康ドリンク
の6つです。
■先ずは、健康診断費用について
健康診断費用は、社長はもちろん、社長以外の従業員に係るものもすべて事業上の費用として処理することが認められます。
ただし、健康診断費用が費用として認められるのは、それが「福利厚生費」だからです。
事業費用としての「福利厚生費」は、あくまで全員参加が原則。仕事の都合で一部の社員が受けられなかった場合は別にして、最初から対象が社長だけ、あるいは特定の社員だけという場合は社長等に対する「給与」の扱いになりますから注意して下さい。
■人間ドックの費用
健康診断が一般的な病気の簡易的なチェックであるのに対し、人間ドックはより多くの器官を対象に詳しい検査を行いますから、費用は一般的な健康診断に比べて割高となります。
とはいえ、社長に万が一のことがあっては困りますから、悪いところはなるべく早期に発見しておきたいと思うのは当然ですね。
というわけで、人間ドックの費用も、事業上の経費として認められて当然と考えますが、過去には国税不服審判所の裁決(平成28年9月20日)で、人間ドックの費用が役員賞与該当するとして、結局は経費には認められなかった―という事例があります
事実関係は以下の通りです。
・役員のみが人間ドックを受診していた
・人間ドックの費用は役員1人につき約35万円だった
・従業員が受けたのは通常の健康診断のみで、費用は1人あたり約1万8千円だった
これに対して国税不服審判所の判断は次の通りでした。
・役員の人間ドックの費用と従業員の健康診断の費用には大きな格差がある。
・生活習慣病の予防を目的とした人間ドックを無償、または、低額で受診することは経済的利益の享受に当たる。
・会社側が主張する経営上のリスクという事情と人間ドックの費用が賞与に該当するか否かは無関係。
このうち①については、35万円という価格は、確かに人間ドックの費用としてはかなり高額と思われますから、役員と従業員の間に一定の「格差」を設けることは当然のこととしても、その「開き」に問題ありとした審判所の判断は、認めざるをえないかも知れません。
■会社のリスク回避のための費用か個人的費用か
しかし②はどうでしょうか。人間ドックはもともと、会社の業務の必要から、万一に備えて受けるものです。何かが発症などしてからでは遅いのです。しかし、審判所の判断は人間ドックの費用は本来、個人が負担すべきものであって、そのうちの一部を会社が負担することは認めるとしても、そこには当然、限度がありますよーという考え方に立脚したものの様に感じられます。
それは、忘年会、新年会の費用は本来、個人が負担すべきだが、一定額までなら会社が負担することも認めましょう、ただし、一定額を超えた分は給与ですよ―という考え方と同じものを感じます。イベント事は、言ってみれば個人的な楽しみ、それを、会社のリスク管理の費用と同一視されては、社長も納得がいかないのではないでしょうか。
最後の③は正直、何を言っているのか理解に苦しみます。経営上のリスクを回避するための費用を会社が払った場合であっても、そのリスクが役員に起因するものであるならば、それは役員の個人負担であるべきだという考え方に読めます。
これでは、まるで、役員が使う車の任意保険の保険料は、会社が万が一のリスクに備えるための費用であっても、運転するのは役員個人で、けがや障害をかかえる危険は役員個人が負うわけだから、それと会社のリスクは無関係という考え方と同じように聞こえます。
人間ドックの費用については、紹介した裁決例はやはり、35万円という高額な支出が問題になったのであって、実際には、たいていの人間ドックに係る支出は費用として認められていると思います。
とはいえ、通常よりもちょっと高額な支出は、人間ドックに限らず、なぜ、それだけの支出が必要だったのか、他に代替できるものはなかったか-などの抗弁材料はそろえておきたいものですね。
■マッサージ費用
経営者によっては肩こりや腰痛がひどく、仕事もままならないという方はたくさんおられるでしょうから、その原因が仕事のせいであることが明確であるなら、車や機械などのメンテナンス費用と同様、マッサージに係る費用も事業経費に認められてしかるべきと考えます。
立ち仕事が多い飲食店の経営者や現場作業に出ることが多い建設会社の社長であれば、「仕事のせい」という主張は通りやすいでしょう。
ただし、そうでない場合は、一度、専門医の診断を受けて「仕事」と「症状」の関連性について何らかの証明をしてもらうなどの“裏づけ”はとっておいた方が良いと考えます。
■健康器具
マッサージ費用と同様に、肩こりや腰痛などの症状があり、それが仕事のせいであることが明確で、その症状をやわらげるためのものであれば健康器具の購入費用は事業経費に認められると考えます。逆に、単に体をスリムに保っておきたいなどという動機では、“見た目重視”の仕事でない限り、費用処理は認められないと考えた方が良いでしょうね。
ただ、具体的な症状がなくても、たとえば、デスクワークが多い職場で、日に数回は社員全員、ストレッチで体の凝りをほぐして、仕事がんばりましょうーということであれば、これは経費に認められると思います。
ただし、健康器具が1台30万円以上であれば、いったん資産として計上し減価償却をしていく必要があります。
■スポーツクラブ
スポーツクラブに係る費用も、終業後は社員全員が誰でも自由に利用可能ということであれば「福利厚生費」として経費処理が可能です。
入会金についてはいったん資産計上する必要がありますが、有効期間があって、脱退しても入会金の返還を受けることができないのであれば「繰延資産」として償却することとなります。
■健康ドリンク
どんな仕事であれ、仕事中に飲むお茶やコーヒーは「福利厚生費」として会社の経費になります。
健康ドリンクというと、なんとなく、病気でもないし、効果のほどもはっきりしないのに、本当に経費に落ちるのかと思われる方がおられるかも知れませんが、要は仕事中にほっと一息をつくための「飲み物」ですから、日本茶やコーヒーが良くて、健康ドリンクはダメだ-という理由はありません。
健康維持に関する費用について一度話を聞いてみたいと思われたら
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