節税と生命保険その2~返戻率が100%を超える場合
2023年02月17日節税ブログ その104
●節税と生命保険その2~返戻率が100%を超える場合
■最高解約返戻率が100%を超える生命保険契約
前回は、2019年に生命保険に関する法人税のルールが変わって、生命保険は社長の退職金対策にはほとんど使えなくなってしまったことを具体的な数字を使ってお話しました。
今回は、さらに次の前提で生命保険を使った社長の退職金対策を見て行こうと思います。
【前提】
会社の利益 毎期3千万円(生命保険料を支払う前)
社長の年齢 契約時50歳
支払保険料 年間624万円
保険期間 35年
解 約 15年目 (最高解約返戻率100.3%となる年度)
法人税等 税率33%
【15年目(最高解約返戻率100.3%)で解約した場合】
費用計上額 最初の10年間 毎期 61万円(支払保険料の9.73%)
後半の 5年間 毎期186万円(支払保険料の29.8%)
法人税等 最初の10年間 毎期970万円
後半の 5年間 毎期929万円
この結果、15年目の終わりで現金は2億1,297万円残りますが、解約返戻金が保険料累計9,360万円の100.3%、9,388万円支払われますから、現金合計は3億685万円となります。
ただし、解約返戻金9,388万円と保険積立金7,823万円との差額1,565万円は会社の雑収入に計上しなければいけませんから、費用に計上できる限度額は差し引き2億9,120万円になります。
■生命保険を使わず税金を支払った後の現金を貯蓄していったら
【保険契約を結ばない場合】
一方、保険契約を結ばない場合は
会社の利益 毎期3千万円
法人税等 毎期990万円
現金残高 毎期2,010万円
は変らず、15年目の終わりには現金残高は3億150万円となります。
そうすると、15年経過した時点での現金残高は
【保険契約を結んだ場合】 3億685万円(現金残高と返戻金の合計)
【保険契約を結ばない場合】3億150万円
となり、保険契約を結んだ方が現金は535万円多く残ることになります。
この差は、保険契約を結んだ場合に支払った保険料の累計9,360万円よりも返戻金9,388万円が28万円多かったことと法人税の負担が15年で
【保険契約を結んだ場合】 1億4,343万円
【保険契約を結ばない場合】1億4,850万円
と保険契約を結ばない方が507万円多く現金が出ていったことの結果です。
■シミュレーションの結果は結果として・・・
ただし、これは前回のシミュレーションと同様、会社が15年間ずっと毎年3千万円の利益を“規則正しく”計上できたとしたら―という前提での話です。
また、確かに15年目では保険契約を結んだ方が535万円だけ現金は多く残りますが、これは15年目に解約返戻金9,388万円が入金された結果なのです。解約返戻金が入金される前は
【保険契約を結んだ場合】 現金の年間残高 1,406万円~1,447万円
15年間の累計 2億1,297万円
【保険契約を結ばない場合】 現金の年間残高 2,010万円
15年間の累計 3億150万円
となります。つまり、現金残高は15年間で9千万円近い差額としてあらわれてきますから、途中で緊急の資金需要が発生すれば、やむなく低い返戻率で保険契約を解約せざるを得ない事態も十分予想されます。
前回でもお話した様に、やはり、生命保険を使った退職金対策はかなりむずかしくなってしまいました。ほとんど不可能に近いといってもいいかも知れません。
退職金の規模にもよりますが、社長の退職金対策としては生命保険以外の手段を使った方が効率的といえます。毎月あるいは毎年の掛金で節税しながら、数十年後に希望の退職金を受け取る方法については、これからもこの節税ブログにしっかりと書いていく予定です。
社長の退職金対策を一度シミュレーションしてみたいとお考えでしたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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