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節税と生命保険~退職金対策に生命保険は使えない?

2023年01月25日

節税ブログ その103

●節税と生命保険~退職金対策に生命保険は使えない?

 

税制の改正が与えた影響

 

かつては社長の退職金対策といえば、先ず、最初に出てくるのは生命保険でした。

 

しかし、2019年の2月にその生命保険に関するルール(正確には、法人税の基本通達)が大きく変わって、それまでのようなあつかい方ができなくなってしまいました。

 

以前は、支払った保険料の全額を費用に落としながら、社長の退職時期に合わせて保険契約を解約し、入ってきた保険金、すなわち会社の収益を社長に支払う退職金と相殺して課税を回避する―ということができました。

 

しかし、今はもうそれができなくなってしまったというわけです。定期保険は最高解約返戻率の違いによって、支払った保険料の60%しか費用計上が認められないもの、40%しか費用計上が認められないもの等に分類され、その取扱いに従うしかなくなりました。

 

結論からいうと、生命保険を使った社長の退職金対策はほとんど意味がなくなってしまいました。

 

というわけで、ここからは、生命保険で社長の退職金を用意する方法と利益の中から一定額を通帳に預けていく方法では、どう現金残高に違いが出てくるかを具体的な数字を使って説明したいと思います。

 

生命保険を使った場合と使わない場合 

 

【前提】

会社の利益 毎期1千万円(生命保険料を支払う前)

社長の年齢 契約時50歳

支払保険料 年間422万円

保険期間  20年

解  約  8年目(解約時の返戻率70%)と15年目(最高解約返戻率85%となる年度)

法人税等  税率30%

 

【8年目(返戻率70%)で解約した場合】

費用計上額 最初の8年間 毎期169万円(支払保険料の40%)

法人税等  最初の8年間 毎期249万円

 

この結果、8年目の終わりで現金は2,629万円残りますが、解約返戻金が保険料累計3,376万円の70%、2,363万円支払われますから、現金合計は4,992万円となります。

 

ただし、解約返戻金2,363万円と保険積立金2,026万円との差額338万円は会社の雑収入に計上しなければいけませんから、差し引き費用計上額は4,655万円になります。

 

【保険契約を結ばない場合】

一方、保険契約を結ばない場合は

 

会社の利益 毎期1千万円

法人税等  毎期300万円

現金残高  毎期700万円

 

となり、8年目の終わりには現金残高は5,600万円となります。

 

現金残高で見ると【保険契約を結んだ場合】は4,992万円、【保険契約を結ばない場合】は5,600万円ですから、契約なしの方が、608万円現金が多く残ることになります。

 

最高解約返戻率の場合でどうなるか

 

次に、解約時期を15年まで伸ばして、解約返戻率が最高の85%となる場合を見てみるとどうでしょうか。

 

【15年目(最高解約返戻率85%)で解約した場合】

費用計上額 最初の8年間 毎期169万円(支払保険料の40%)

後半の7年間 毎期422万円(支払保険料全額)

 

法人税等  最初の8年間 毎期249万円

後半の7年間 毎期173万円

 

この結果、15年目の終わりで現金は5,461万円残りますが、解約返戻金が保険料累計6,360万円の85%、5,380万円支払われますから、現金合計は1億842万円となります。

 

ただし、解約返戻金5,380万円と保険積立金2,026万円との差額3,355万円は会社の雑収入に計上しなければいけませんから、差し引き費用計上額は7,487万円になります。

 

【保険契約を結ばない場合】

一方、保険契約を結ばない場合は

 

会社の利益 毎期1千万円

法人税等  毎期300万円

現金残高  毎期700万円

 

は変らず、15年目の終わりには現金残高は1億500万円となります。

 

そうすると、15年経過した時点での現金残高は

【保険契約を結んだ場合】 1億842万円(現金残高と返戻金の合計)

【保険契約を結ばない場合】1億500万円

となり、保険契約を結んだ方が342万円多く残ることになります。

 

この差は、保険契約を結んだ場合は、支払った保険料の累計6,330万円と返戻金5,380万円との差額950万円が戻ってこなかった一方で、法人税の負担は15年で

【保険契約を結んだ場合】 3,209万円

【保険契約を結ばない場合】4,500万円

と保険契約を結ばない方が1,290万円多く現金が出ていったことの結果です。

 

長期間のシミュレーションの結果はむずかしい

 

ただし、これは会社が15年間ずっと毎年1千万円の利益を“規則正しく”計上したとしたらという前提での話です。差は15年で“わずか”300万円程度なのです。

 

一方で、費用にできる数字は大きく違ってきます。

注)この場合、税務上の適正額か否かという問題はいったんおきます。

 

【保険契約を結んだ場合】

  • 現金残5,460万円+返戻金5,380万円=1億840万円
  • 解約返戻金が保険積立金を超過する金額3,355万円(雑収入に計上される金額)
  • ①-②=7,487万円

【保険契約を結ばない場合】

現金残高1億500万円

 

となり、差額は3千万円以上になります。

 

結果は、社長が何歳で保険契約に入るか、保険期間を何年とするか、解約返戻率がどこでピークを迎えるかによって当然、大きく違ってきます。この点は改正前も同様ですが、一連の判断が2019年の改正によっていっそう難しくなったことだけは間違いありません。

 

退職金対策と生命保険についてもっと詳しくお聞きになりたいと思われたら

「生涯」税金コンサルタント

さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足

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