節税と在職老齢年金~社長が厚生年金を満額もらう方法
2022年12月29日節税ブログ その102
●節税と在職老齢年金~社長が厚生年金を満額もらう方法
■在職老齢年金とは
60歳以降に会社から給料をもらいながら支給を受ける老齢厚生年金を
在職老齢年金
といいます。
で、問題は毎月支給される「役員報酬」の額次第では、当然、社長がもらえるはずの年金がカットされてしまうという点です。
たとえば、厚生年金を月額10万円もらえる予定の社長が、自分の会社から月額60万円、年額720万円の役員報酬をもらっている場合、このもらえるはずの年金がまったくもらえなくなってしまいます。
注)ただし、老齢基礎年金は全額支給されます。
一定の年齢になったら年金を支給しますから、ちゃんと掛金を納めて下さいね!
と国から言われてせっせと掛金を納めてきたのに、いざ、年金がもらえる年齢になったら
あなたは今も毎月給料を●●万円もらってますから、年金は支給できません!
と言われてしまうというわけです。私は、これは
国家的詐欺
だと思います。思いますが、このことを「おかしいじゃないかっ!」と大きく取り上げ人がいない(あくまで私の知る限りですが・・・)のが不思議でなりません。
■年金支給停止額の計算方法
それはさておき、この計算のカラクリがどうなっているかというと
「年金の基本月額」と「給料の月額」の合計額から「47万円」(支給停止基準額)を引いた金額の2分の1がプラスであれば、その金額が支給停止されてしまうというわけです。
冒頭の例でお話すると
(厚生年金・月額10万円+役員報酬・月額60万円-47万円)÷2=11万円
となって、この11万円が年金の支給停止額となります。そうすると、もともともらえるはずの年金は10万円ですから、当然、年金は1円ももらえなくなってしまうというわけです。
注)繰り返しになりますが、これは老齢厚生年金部分の話です。老齢基礎年金は全額もらえます。
しかも、この支給停止部分は、社長が給料をもらわなくなった時に、後からまとめてもらえるかというと、残念ながら、そうはなっていません。
100%切り捨て
です。つまり、掛金は完全に払い損だったということになります。
■年金支給停止を回避する方法
では、これを回避する方法はないかというと
手はあります
ひとつは役員報酬を下げるというやり方です。
先ほどの例だと、役員報酬を月額37万円まで下げれば、厚生年金の月額10万円は満額もらえます。
ただし、もともと60万円もらっていた役員報酬を37万円まで下げれば、年金を満額もらっても生活レベルはやはり落とさざるをえないでしょう。
ですから、この手は実際にはあまりとりえないと言わざるをえません。
では、どうすればいいか
実は、給与収入は1円も下げずに、厚生年金を満額もらえる方法があるのです。
■事前確定届出給与を利用する方法
役員であっても、賞与を支払って会社の経費にすることができます。これを
事前確定届出給与
といいますが、先ほどの計算例で示した「給料の月額」にはこの事前確定届出給与が含まれます。
ただし、賞与の場合は、年金掛金の計算をする場合もそうですが、いくら賞与の額が高額でも150万円を超える部分はカットされ、あくまで150万円をもとに年金掛金が計算されるのです。
そして、この限度額の考え方は在職老齢年金の支給停止額の計算にも適用されます。ですから、最初の例で年額720万円の役員報酬をもらっている場合、月額60万円の報酬をもらう代わりに、月額報酬20万円(年間240万円)と賞与年額480万円、合計720万円というもらい方にするのです。
そうすると、先ほどの計算式の役員報酬の部分は、賞与の部分が480万円ではなく限度額の150万円になりますから
月額20万円+賞与12.5万円(150万円÷12ヶ月)=32.5万円
になります。そして、支給停止額の計算は
(厚生年金・月額10万円+役員報酬・月額32.5万円-47万円)÷2=▲約2万円
となって、マイナスの金額は、要はゼロ、支給停止額はなしとなりますから厚生年金は満額もらえる様になるというわけです。
いかがですか。もちろん、賞与の時期まで、月額20万円の給料でやりくりしなければいけないという問題などクリアしなければならない点はありますが、せっかく長年払って来た厚生年金保険料がムダにならないというメリットは大きいと思います。
今回の話は、節税とはなりませんが、社長のキャッシュを増やすという目的にはかないます、ぜひ、一度検討してみてはいかがでしょうか。
在職老齢年金についてもっと詳しくお聞きになりたいと思われたら
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さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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