節税と経費計上~どうせ税金で持っていかれるなら
2022年05月15日節税ブログ その96
●節税と経費計上~どうせ税金で持っていかれるなら
■節税効果と現金が出ていくメリット・デメリットをはかりにかけて・・・
決算が近づいてきて「どうも予想していたより利益が出そうだ」という時に
せっかく稼いだ利益からどうせゴッソリ税金で持っていかれるなら
前から欲しかったあの車買ってしまおう
みたいな話を経営者の方がされることがよくあります。
しかし、節税効果と現金が出ていくメリット・デメリットをはかりにかけて、それでも「どうせ税金で持って行かれるなら・・・」という最終判断をしたとしても、実は
せっかくの判断がムダに終わってしまった!
というのはよくあるお話です。
■どうせ税金で持っていかれるなら、前から欲しかったあの車買ってしまおう
車は、原則、購入した時の一時の費用にはなりませんが、4年落ちの中古車だと初年度に100%費用で落とすことができます。
ただし、減価償却費の計算は月割りですから、事業年度の最初の月に購入していないと、100%費用で落とすことはできません。
つまり
決算月に買ったものは本来の償却限度額の12分の1しか費用に計上できない!
ということです。ここは本当に注意して下さい。
それと、もうひとつ。
100%償却ができるのは通常、法人の場合で、個人事業者はその半分しか償却できない!
という点です。
減価償却費の計算には、定率法と定額法というふたつの方法があって
定率法は、最初の年に償却費を多く計上できて、2年目以降は償却費がだんだん減っていくという計算方法
定額法は毎年同じ額の償却費を計上していく方法
です。
償却の方法は、法人であれ、個人事業者であれ、最初にいずれの方法で償却計算を行うかを税務署に届け出るのですが、その届出をしない場合は
法人は定率法
個人事業者は定額法
でやりなさいということになってしまいます(これを「法定償却方法」といいます)そして、ここからが重要です。
■個人事業者は法人の半分しか減価償却ができない
4年落ちの中古車は、税務上2年という見積耐用年数を使って償却をすることになりますが、その時の償却率が
定率法は1.0
定額法は0.5
ということになっているということです。ですから、中古車の値段が200万円だった場合
定率法の減価償却費 200万円×1.0=200万円
定額法の減価償却費 200万円×0.5=100万円
しかできないということです!
償却の方法を後から変更することもできますが、その場合は変更しようとする年の3月15日まで申請書の提出が必要ですし、最初に定額法で減価償却費の計算をした場合は、これを3年間は継続しなければならないことになっています
■どうせ税金で持っていかれるなら、がんばってくれた従業員に決算書賞与を出してあげよう
決算賞与は、決算月内(個人事業の場合は12月中)に実際に支払った場合はもちろん、資金繰りの都合などで、未払計上した場合も費用とすることができます。
ただし、その場合は
・決算月内に支給額を各人別に、かつ、全ての使用人に通知し
・通知した通りの金額を決算日の翌日から1ケ月以内に支払っていること
が必要です。
ですから、Aさんは今年がんばってくれたけど、Bさんはそうでもなかったから
Aさんにだけ決算賞与を払ってやろう
というのは認められません。
また、決算月は従業員には黙っておいて、翌月、支払う段階になって初めて
明日、みんなに決算賞与払うことにしたから
というのも認められません。
後日、税務調査が入った時に、調査官から「いつ、社長から決算賞与のこと聞きましたか?」と聞かれた従業員が
支給日の前日です
と答えてしまったら、結局、会社の処理がすべて否認されてしまうことにもなってしまいます
何事も最後のつめが重要です。
■どうせ税金で持っていかれるなら、みんなを社員旅行に連れて行ってやろう
これも税務上
・旅行の期間が4泊5日以内であること。
・旅行に参加した人数が社員全体の50パーセント以上であること
が要件です。そして、大事なのは
決算月までに実際に旅行に行くこと
です。
旅行会社に予約だけして、決算月までに旅行代金は振込んだけれど、旅行自体はみんなに時間の余裕ができた決算の翌月にやろう―では費用にはなりません。それは単なる
前払金
を支払っただけになりますから気をつけて下さい。
■どうせ税金で持っていかれるなら、古くなったパソコンを全部買いなおそう
もちろん、買うのはパソコンに限る必要はなく、一定額以下の資産であれば何でもかまいません。ただし、税務上は、取得価額によって資産の取り扱いがそれぞれ異なりますので注意して下さい。たとえば
①.1台10万円未満の資産であれば、買った時の費用処理が可能
②.1台20万円未満であれば、毎期、取得価額の3分の1を減価償却費とすることが可能(この場合、月割り計算は必要ありません)
③.1台30万円未満であれば、買った時の費用として全額費用処理が可能。ただし、青色申告者であること、年間合計で300万円までが限度という制約があります
少々、わかりにくいですが、上の3つの制度はそれぞれ別の制度ですから、1台25万円の備品を買った場合は、③の制度しか使えませんが、1台19万円の備品であれば②の制度でも、③の制度でもどちらを使ってもかまわないということです。
ただし、どんな資産であれ、決算月の末日までに会社に届いていて、実際に使い始めることが必要です。
代金は払ったけれど、決算月までにパソコンが届いていなかったり、届きはしたけれど、まだ、箱に入ったままの状態だった―ということでは費用になりません。
■何のための節税だったのか-とならないために
さて、どうせ税金で持って行かれるなら-ということで何らかの費用なり、資産なりにお金を使う場合は、最初にお話した様に節税効果と現金が出ていくメリット・デメリットを十分に比較検討して下さい。
・車は買ったけれど、ほとんど駐車場に置きっぱなしのままになってしまった!
・決算賞与は払ったけれど、社員の仕事ぶりは今までとそんなに変わらない!
・社員旅行はしたけれど、正直、社員はいやいや行ったみたいだ!
・せっかくパソコンを買ったのに、誰も使いこなせていない!
なんてことになったら、節税効果以上に現金が出ていっただけ
あぁ、これじゃ何のための節税だったのか!?
なんてことになってしまいます。
くれぐれも事前の検討をお忘れなく。
どうせ税金に持っていかれるなら・・・とお悩みでしたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
にお問い合わせください。
〒819-0002 福岡市早良西区姪の浜4-22-50クレインタートル弐番館801
――――― お問合せ先は ―――――
TEL092-892-3888/FAX092-892-3889
前のブログ記事へ | 次のブログ記事へ |