節税とスーツ代~経費にならない理由ってナンダ?
2022年06月14日節税ブログ その97
●節税とスーツ代~経費にならない理由ってナンダ?
■スーツ代の経理処理はむずかしい?
お客様から、時々
スーツを買ったんだけど、これは経費にできますか?
という質問を受けます。答えは
経費になる場合もあるし、ならない場合もある。しかし、税務署はなかなか認めようとしないでしょうね
といった趣旨のことを話します。
スーツについてはあわせてこちらの記事もお読みください。
■スーツ代が経費になるかどうかで争われた裁判
前回の内容をまとめると
・税務署は「スーツは仕事でも着るでしょうけど、プライベートでも着ることはあるでしょう?」といった理屈で、経費に認めようとしない。
・しかし、カフェの店員さんが「制服」として着ている黒っぽいポロシャツは街着としても十分に着られそうだが、あちらは100%経費に認められるのはなぜなのか?
・スーツが経費として計上されないのは、税理士の「自己規制」もあるのではないか。
ということで、スーツの問題をさらに調べていると、かなり昔の話になりますが、昭和49年に京都地裁が下した判決がありました。
税務署の判断を不服として裁判を起こしたのは某大学の先生です。ですから、このケースは個人の所得税の問題を取り扱ったものです。
先生には給与所得の他、印税や講演料などの雑所得がありましたが、結論を申し上げると、スーツ代は必要経費として認められるべきだとする先生の主張は、結局は認められませんでした。
裁判所が述べた理由は次の通りです。
思うに、被服はひとり給与所得者に限らず、誰もが必要とし、その種類、品質、数量等は個人の趣味嗜好によってかなりの差異があり、耐用年数についてもかなりの個人差が存するものであるから、被服費は、一般的には、個人的な家事消費たる家事費に属すると解するのが相当である
■スーツ代が経費に認められる場合もある
どうでしょう? 私自身は、上記の理由には多いに納得できないものを感じます。
個人の趣味嗜好によってかなりの差異があるから経費に認められないーというのであれば、事業に使用するクルマや備品などは全員が同じものを使えということにならないでしょうか。
それはさておき、裁判所は続けて公務員における制服にふれた上で
その他の一般の給与所得者についても、主に家庭において着用するのではなく、その地位、職種に応じ、一定の種類等の被服を必要とする場合には、その被服費は業務にも関連するものとして、家事費ではなく、家事関連費(家事と業務の両方にかかる費用)であると解するのが相当である
とも述べています。
つまり、地位や職種などに応じて一定の被服を必要とする場合は、家事関連費として経費にすることが認められることがあるというわけです。
■むずかしいけれど、不可能ではない
ただ、個人事業の場合、家事関連費は業務にかかる部分を取引の記録などに基づいて明らかにしなければいけない事になっています。
では、そういうことがスーツについて可能かというと、一般にはなかなかむずかし面はいなめないと思います。
しかし
・ふだんはラフな服で仕事をしているが、大事な営業や商談などではビシッとスーツで決めたい場合
・仕事では常にスーツを着用しているが、“普段着”と“よそ行き”はしっかりと分けて、よそ行き用だけ経費に落としたい場合
・セミナーや講演会などで人前に立つ時用に特別のスーツがどうしても必要で、実際に特別仕立てのものを着用している場合
であれば、業務部分を割り出して、家事関連費として経費処理することもできるでしょうし、あるいは、100%経理処理も可能かも知れません。
工場で働く工員が着る制服は作業着として100%経費になります。しかし、営業も銀行折衝もこなさなければならない経営者にとって、スーツはいわば作業着のようなものです。
スーツは経費にならない
という“常識”にとらわれることなく、上記に該当しそうだと思われる場合は、その点を一度じっくり考えて見られてはいかがでしょうか。
自分のスーツ代はなんとか経費に落ちないか・・・と思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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