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節税と不動産投資の法人化~法人化のウソと誤解

2022年01月14日

節税ブログ その90

●節税と不動産投資の法人化~法人化のウソと誤解

 

■法人化有利説にあるウソや誤解

 

不動産投資については法人化が絶対有利とは必ずしも言えないーという内容のことを前回のブログで書きました。

 

その中で、ネット等で言われる法人化有利説には、少なからずウソや誤解がある―ということにも少しふれました。

 

そこで、今回は私が、youtubeなどネット上で実際に見つけた「?」がつく発言についていくつかをご紹介したいと思います。

 

【その1】

車については、個人は毎日、運行記録をつけないと経費化ができないが、法人はそうではない。

 

いや、いや、そんなことはありません。

 

これは、法人の方が個人に比べて経費の幅が広がる―という中で出てきた話で、確かに、法人の方が経費の幅が広がるというのは事実ですが、税法のどこにも

 

個人事業者は日々、車の運行記録をつけなければならない

 

などということは書いてありません。仮に、そんなことになったら、個人事業者はそれだけで大変な事務作業を日々負わされることになってしまいます。

 

また、法人だから、記録は必要ないというのも、実はあまり正確ではありません。

 

過去の裁決例でも、ある会社が自己の所有するクルーザーを従業員の福利厚生目的に使ったことを理由に経費計上を認めるよう主張したところ、利用記録等がないことを理由に税務当局によってしりぞけられたことがあります。

 

クルーザーという資産の性格上、会社の本来業務に使用されないことは明らかです。だからこそ税務署側は利用記録を求めたのです。

 

しかし、会社には利用規約も利用記録もなかったために、経費計上は結局、否定されてしまったというわけです。

 

つまり、個人であれ、法人であれ、状況次第では記録を求められることはあるし、個人だから常に記録を求められ、法人だから求められない―ということはないということです。

 

■経費になる、ならないで大事なのは中身の問題

 

【その2】

(法人の方が)打合せ食事代、交際費も経費化しやすい。旅費、パソコン、書籍代、セミナーも業務、事業に必要であれば経費化がしやすい

 

打合せ食事代、交際費については、要は支出の中身の問題で、法人だから経費化しやすく、個人はしにくいということはありません。

 

また、旅費、パソコン等で業務、事業に必要であれば、法人、個人に関係なく経費化できるのであって、経費化しやすいとか、しにくいという話ではありません。要は

 

支出の中身

 

の問題です。

 

個人でも管理会社の人を接待したり、業務用のパソコンを購入した場合は、問題なく経費になりますし、法人でも接待の相手が友人であったり、子供用に買ったパソコンの場合は経費にはならないということです。

 

減価償却のマネージメントとは?

 

【その3】

(借入金は)個人は年収の20倍ぐらいが限度だが、法人は基本的に青天井で借りられる

 

不動産投資にはつきものの「融資」についての話ですが、個人の借入限度額はともかく、たとえ法人であっても、返せる範囲でしか借りられないのは当然で、青天井で借りられるはずがありません。

 

【その4】

個人は強制償却だから、売却時のマネージメントがむずかしいが、法人はマネージメントが可能である

 

具体的な内容にはふれられていないので、ここから先は私の想像でお話をします。

 

個人事業は強制償却ですから、毎年、規則正しく償却を行っていった結果、たとえば、10年後に物件を売却したときに、売却価額>償却後の簿価となった場合は、売却益に対して、長期譲渡所得の場合は、20%の税率で税金を持っていかれてしまいます。

 

一方、法人の減価償却は任意ですから、10年間まったく償却を行わなかった場合、簿価は10年前の取得価額のままです。

 

そうすると、一般に取得時の価額を上回る金額で物件が売れることはありませんから、会計上は売却価額<取得価額となって売却損が計上され、税金は0となります。

 

そういうことがあるので

 

法人はマネージメントが可能

 

ということになったんだと思います。

 

税務上の適正時価という問題

 

しかし、税務は常に、売却価額だけではなく取得費についても

 

適正時価

 

であるか否かに注目します。上記の法人が計上した売却損はあくまで会計上の話であって、事業用の建物の時価は、一般的に、経過期間に応じて減価償却費を控除した後の簿価とみなされます。

 

そうすると、会社が計上した売却損は否認されたうえで、売却益の計上がもれていたということで、その分が利益に加算され、結局は個人が行った処理結果と同じになってしまいます。

 

売却時の「時価」のとらえ方は、ひとつではありませんから、上の例はあくまでひとつの考え方ではありますが、少なくとも、10年前に買った建物の現在の時価が取得時のままということはありえません。

 

つまり、法人といえども、売却時の処理を好きなようにマネージメントすることはできないというわけです。

 

結局、法人は誤解されやすい?

 

【その5】

法人は複式簿記で毎年決算書が作成されるので、個人に比べて社会的責任を負う法人として認知されやすい。

 

個人も青色申告の場合は、法人と同様、毎年、複式簿記の原則にのっとって決算書を作成する義務があります。

 

それなりの規模と業歴のある会社ならともかく、節税目的で作ったばかりの会社が複式簿記で決算書を作っているからといって、「社会的責任を負う法人として認知されやすい」ということは先ず、ありえないと思います。

 

最後は、法人のデメリットについてです。

 

【その6】

(法人は)デメリットとして面倒な定款の作成、決算の官報への公告がある。

 

個人と違い、法人が設立に伴って「定款」を作らなければいけないのは事実ですが、定款に書くべき決め事や文言は、大企業は別にして、小規模の会社であればネット上にあるサンプルを参考に十分に作成可能ですし、実際は、司法書士さんに作ってもらうことがほとんどですから、定款の作成が面倒というはあまりあたらないと思います。

 

決算書の官報のへの公告も、法律上、法人は確かに公告の義務はありますが、これまた大企業は別にして、実際上、公告を出している中小企業はほとんどありません。

 

不動産投資の法人化について詳しくお話をお聞きになりたいと思われたら

「生涯」税金コンサルタント

さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足

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