節税と健康管理~人間ドックの費用は必要経費か?
2019年08月29日節税ブログ その40
●節税と健康管理~人間ドックの費用は必要経費か?
■健康診断と人間ドックの違い
事業経営はどんな業種であれ体が資本です。
そのため多くの会社では社長や従業員のために健康診断を行います。
もちろん、健康診断にかかる費用は「福利厚生費」として会社の経費となります。
では、人間ドックの費用はどうでしょうか?
先ず、健康診断と人間ドックの違いですが、健康診断が一般的な病気のおおまかなチェックであるのに対し、人間ドックはより多くの臓器を対象に詳しい検査を行いますから、それだけに病気の早期発見に効果があります。
当然、費用は一般的な健康診断に比べて割高となります。
会社としては、社長に万が一のことがあっては困りますから、悪いところがあれば、なるべく早期に発見して事なきを得たいと思うのは当然です。
というわけで、人間ドックの費用は会社の経費にしたいと誰しもが考えます。
■人間ドックの費用についての税務当局と会社側の主張
では、税務はどうか?
この点について、国税不服審判所の裁決(平成28年9月20日)があります。
結果は人間ドックの費用は役員賞与該当するから、経費に認められないという税務当局の主張が認められました。
この会社では
・役員のみが人間ドックを受診していた
・人間ドックの費用は役員1人につき約35万円程度だった
・従業員が受けたのは通常の健康診断のみで、費用も1人につき約1万8千円だった
というものです。
これについて会社側は
・生活習慣病の予防を目的とした人間ドックは一般的である
・役員に経済的利益をもたらさない
・一般的な人間ドックとおおむね同じ内容である
・役員が病気になった場合は従業員が病気になった場合よりも影響が大きく経営上のリスクがあるから合理的である
と主張しました。
■国税不服審判所の判断
しかし、これに対して国税不服審判所は下記のように判断しました。
・役員の人間ドックの費用と従業員の健康診断の費用には大きな格差がある。
・生活習慣病の予防を目的とした人間ドックを無償、または、低額で受診することは経済的利益の享受に当たる。
・会社側が主張する経営上のリスクという事情と人間ドックの費用が賞与に該当するか否かは無関係。
確かに、福利厚生費の原則は「公平性」です。特定の誰かだけを対象とするものは、その人に給与を与えたものとみなされます。
従業員であれば、源泉徴収のもれという問題は別として、給与である以上、経費には認められます。
問題は、役員に対する臨時的な支出です。臨時的な支出ですから毎月の給与ではなく賞与ということになります。
役員に対する賞与は経費に認められません。
■役員と従業員の格差をどうとらえるか
しかし、同じ福利厚生でも従業員と役員に格差を設けることは自然であり、税務もそれを認めています。
たとえば、旅費日当については従業員と役員に格差を設けることが認められています。
その考え方からいえば、なぜ、経営により重要な責任を負う役員について人間ドックの費用が認められなかったのか疑問が残ります。
数々の講演や著作で有名な税理士の見田村元宣さんが自身のメルマガで、自分が立ち会った税務調査の事例では、納税者が上記の会社側と同様の主張をして経費として認めてもらった事例もあったと書かれています。
しかし、同時に「同じことが次も可能かどうかはまったく言えません」とも書かれています。
格差を根拠に正当性を主張するのもひとつのやり方ではあると思いますが、とはいっても「人間ドック」の費用はせいぜい数十万円ですから、その主張ために社長の貴重な時間をどれほど費やすことができるのか-というきわめて現実的な問題もあります。
いずれにしても、ここら辺が税務の何とも悩ましいところではあります。
人間ドックを会社の経費で受けてみたいと・・・と思われたら
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