節税とマイクロ法人~マイクロ法人って、ナンダ?
2022年02月25日節税ブログ その93
●節税とマイクロ法人~マイクロ法人って、ナンダ?
■マイクロ法人とは?
ネット上で検索するとマイクロ法人なるものがよく出てきます。
その多くは、マイクロ法人を作ると、税務上こんなに有利-といった感じのものが多いのですが、どうもそれらを読んでみると、専門家として
ン~、それはちょっと違うんじゃない?
と思わざるをえないものが多いようです。
ということで、今日のテーマは、そのマイクロ法人です。
ところで、そもそも
マイクロ法人とは何ぞや?
というお話ですが、先ず、法人についてさまざまなことを取り決めている会社法や法人税法といった法律には、このマイクロ法人という言葉は出て来ません。
マイクロとはマイクロバスやマイクロコンピューターという言葉からわかるように、ごく小さなという意味ですが、ネット上でよくみられる定義は
社長ひとりだけの小さな会社
という意味になる様です。
■ネット上で語られるメリットには要注意
さて、そのごく小さな法人であるマイクロ法人について、ネット上でよくいわれるメリットについて、ここからは具体的に見ていきたいと思います。
先ず、一番に語られるのは
節税効果
です。
「法人化」で節税効果が得られること自体まちがいではありませんが、本当に節税効果が得られるかどうかは状況次第です。
しかし、ネット上の記事を読むと、社長ひとりだけの会社であれば、必ず大きな節税効果が得られるーといった誤ったイメージを読む人に与えてしまっているような印象を受けます。
たとえば、個人事業で年間500万円の事業所得があった場合、個人の税負担は青色申告控除の65万円を受けた場合でも約84万円になります。
そこで、この事業を法人化して社長に500万円の給料を支払うと、法人と社長個人を合わせた税負担は約59万円となって、年間約25万円の節税効果が得られます。
■状況次第で節税効果はこんなに違う
しかし、個人事業で奥さんに月15万円、年間180万円の給料を支払った場合の夫婦ふたりの税負担は約42万円となります。一方、法人化して、社長に320万円、奥さんに180万円、つまり、ふたり合計で500万円の給料を払った場合の税負担は約41万円です。
ここでもやはり、法人化した方が有利なのですが、その差はわずか8千円ほどです。これでは、わざわざ設立費用までかけて、法人化する必要があるかどうかはわかりません。
(注)上記の例は、社会保険やその他の所得控除を考慮しない場合です。これらを考慮すれば当然、結果は違ってきます。
つまり、法人化が有利かどうかの判断は、それが「マイクロ法人」であれ何であれ、繰り返しになりますが、以下の状況等により違ってくるというわけです。
・個人事業で青色申告控除を受けられるかどうか
・個人事業で一定以上の所得があるかどうか
・個人事業で配偶者に経費として給料を支払える状況にあるかどうか
・個人事業、法人でそれぞれの社会保険料の負担をどうするか
■社会保険料を安くすることは本当に可能か?
次のメリットとしては、マイクロ法人を作ることで、社会保険料の負担を減らすことができる―というのもよく目にします。
個人が加入する健康保険は国民健康保険ですが、個人事業者の場合は、事業所得に応じて国民健康保険料が決まります。当然、所得が多ければそれだけ、保険料の金額もふくらみます。
そこで、マイクロ法人を作って、給料を、たとえば、月5万円に設定して、法人の健康保険である協会健保の保険料を大きく減らしましょうーというのがそのカラクリです。
しかし、問題は
そのマイクロ法人で具体的にどんな売上や経費を計上するか
です。
個人事業でやっていたことを完全に法人に移して、個人事業自体を廃業してしまう場合、社会保険料を減らす目的で社長の給料を安くおさえたままでは、法人の利益はそれほど減りませんから、節税という本来の目的からはずれてしまいます。
では、個人事業は廃業せずに、ただ、事業の一部を法人に移して、あるいは、あらたな収益を法人で作り出して、月5万円の社長の給料に見合う程度の売上を計上することができれば、法人の利益を実質ゼロにすることができます。
そうすれば
法人の税金はゼロ、社会保険料も最低限のもので済ませることができる
というわけですが、では、個人事業のどの部分を法人の売上に移すのか、あるいは、新たな収益をどう法人で作り出すのか―というと、これはそう簡単にはいきませんし、様々な税務上の問題を引き起こす可能性もあります。
■その他のメリットもよく見てみれば
他には、複数の役員がいるような会社では、何事も取締役会で協議したうえで決めなければならないが、マイクロ法人は社長ひとりの会社なので、すべてのことを自分ひとりで自由に決定することができるーといったこともメリットとしてあげられているようです。
しかし、そもそも、複数の役員を必要とする会社は、それなりの規模も必要とする会社ですから、いくら社長があらゆることを自分ひとりで決めたいからといって、会社をこま切れ状態にするわけにもいきません。この点をマイクロ法人のメリットとするのはかなりのムリがあると思います。
その他、マイクロ法人を作れば、社会的信用度が増す―といったこともメリットとしてよくいわれているようです。
確かに、初めてのお客様に株式会社〇〇〇と書かれた名刺を渡せば
あぁ、社長さんですか?
と言ってもられるかも知れませんが、少し話をすれば、できたばかりの社長ひとりの会社であることはすぐにわかります。
そんな会社の社会的信用が個人事業に比べて格段に上がるかといえば、これは大いに疑問といわざるを得ません。
経営を志す方が一念発起して、あらたな、会社を立ち上げることやこれまでの個人事業を法人化すること自体は素晴らしいことです。私の事務所にもそんな経営者の方が大勢おられます。
しかし、小さな会社だから、税金も社会保険も安くなって、オールOK-というほど単純にはいきません。
法人規模の大小にかかわらず、法人設立にも、法人成りにも慎重な検討、判断が必要だということに変わりはないのです。
マイクロ法人について詳しいお話をお聞きになりたいと思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
にお問い合わせください。
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