節税と固定資産税~月数按分できない固定資産税の取り扱い
2021年03月30日節税ブログ その73
●節税と固定資産税~月数按分できない固定資産税の取り扱い
■不動産の売買があった場合の固定資産税の取り扱い
今日は、不動産投資にはつきものの固定資産税のお話です。
固定資産税とは土地や建物といった不動産に対して課される税金で、納税義務者は毎年1月1日現在の不動産の所有者です。また都市計画区域内の不動産については固定資産税と合わせて都市計画税という税金も課されます。
納税義務者が毎年1月1日現在の不動産の所有者-ということは、仮に自分の持っている土地建物をその年の1月2日に売ったとしても、1年分の税金を払う義務はあくまで、元の所有者(売主)にある-ということになります。
とはいえ、すでに自分の手を離れた土地建物の税金を1年間払い続けるというのは法律上はともかく、心情的には納得がいかないということで、実際の取引においては固定資産税の精算がよく行われます。
たとえば、ある年度の固定資産税が年間10万円で、その年の6月1日に土地建物を合計3千万円で譲渡したとします。
そうすると、固定資産税の売主、買主それぞれの負担を
・売主側 1月1日から05月31日分 10万円×151日/365日=41,370円
・買主側 6月1日から12月31日分 10万円×214日/365日=58,630円
と計算して、買主は上記の58,630円を譲渡代金とともに売主に対して支払うことになります。
■固定資産税と固定資産税相当額の違い
では、この58,630円は税務上、どう取り扱われるか―というと
・売主側 受取った58,630円を譲渡代金に含めなければいけません。
つまり、売主の譲渡収入は30,058,630円ということになります。
・買主側 支払った58,630円を土地・建物に分けてそれぞれの取得価額とします。
つまり、売主、買主双方がそれぞれの所有期間に応じて固定資産税の精算をしたとしても、税務上、それはあくまで
固定資産税相当額の精算
を行ったというだけで、本来の固定資産税の納税義務は1月1日現在の所有者である売主側にありますから、やり取りした固定資産税相当額は売主側にとって租税公課のマイナスでもなければ、買主側の必要経費にもならないというわけです。
■月数按分できない固定資産税
要するに、固定資産税にはそもそも
月数按分
という考え方がないということです。
このことは、不動産の売買だけではなく、年の途中で不動産投資を始めた場合にも注意をする必要があります。
たとえば、以前から所有していた土地を年の途中から他に貸し出したとします。
この場合、年間の固定資産税を貸付けを開始した月に応じて月数按分するかというと、そうはなりません。
ですから、年税額が10万円で賃貸を始めたのが6月だった場合でも
10万円×7/12=58,333円
が経費になるかというと、そうはならないということです。
固定資産税は通常、毎年5月に納税通知書が送って来ますが、記載内容は次のようになっています。
(例)年税額 10万円
・第1期(納付開始日05月10日) 2万5千円
・第2期(納付開始日07月10日) 2万5千円
・第3期(納付開始日11月10日) 2万5千円
・第4期(納付開始日02月10日) 2万5千円 ※翌年の2月10日です。
※通知書の交付日は5月10日とします。
そして、税金を必要経費に計上するタイミングは
①.納税通知書が交付された日
②.分割された納期のそれぞれの開始日
③.実際に税金を納付した日
のうちから納税義務者が自由に選ぶことができます。
■年の途中で不動産投資を開始した場合の計算例
ですから、たとえば、その年の3月に土地の貸付けを開始した場合で、①を必要経費に計上するタイミングとした場合は、5月10日にはすでに賃貸を開始していますから、全額を必要経費に計上することができます。
しかし、その年の11月から賃貸を開始した場合は、通知書が交付された5月10日はすでに過ぎていますから、全額を必要経費に計上することはできません。
この場合は、②の方法を採用して、第3期の税額だけは経費に計上することができます。第4期分は翌年の必要経費です。
もっとも、固定資産税をずっと納めずに、12月になって通知書の金額をいっぺんに払った場合は、③の実際に税金を納付した場合を採用して、全額をその年の経費にすることができることになります。
ただし、その場合は各納期限に遅れたことになりますから、延滞金というペナルティが課されることも忘れないでくださいね。
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