節税と税額控除~特別償却と税額控除はどちらが得か
2021年08月29日節税ブログ その82
●節税と税額控除~特別償却と税額控除はどちらが得か
■普通償却、特別償却とは?
減価償却とは建物や機械等の固定資産を取得した時に、取得価額の全額を一時の費用として処理せずに、「耐用年数」という使用可能期間に応じて少しずつ費用化する計算手法のことをいいます。
これは多くの方がご存じです。
しかし、毎年、少しずつ償却していく方法とは別に、最初の年だけ、多めに償却費を計上することも条件つきながら認められています。
前者を普通償却、後者を特別償却といいます。
たとえば、取得価額500万円で耐用年数5年のソフトウェアを購入したとします。
この場合、毎年の償却限度額は
500万円÷5年=100万円
となって5年で全額が費用化されます。これが「普通償却」です。
・初年度 普通償却費 100万円
・2年目 普通償却費 100万円
・3年目 普通償却費 100万円
・4年目 普通償却費 100万円
・5年目 普通償却費 100万円 累計 500万円
では、このソフトウェアについて普通償却にくわえて特別償却を行った場合はどうなるでしょうか。
■特別償却をした場合の効果
「特別償却」には色々な制度がありますが、今回はもっとも代表的な「中小企業投資促進税制」を使ってお話をしてみたいと思います。
この制度では、普通償却費とは別に資産の取得価額の30%を特別償却費として計上することができます。ただし、償却できるのは資産を取得した初年度だけです。
そうすると、各年の償却費は次の様になります。
・初年度 普通償却費100万円 特別償却費150万円(*1) 合計250万円
*1:500万円×30%=150万円
・2年目 普通償却費100万円
・3年目 普通償却費100万円
さて、問題はここからです。
■特別償却を使っても取得価額以上の費用計上はできない
3年目までで、償却費の合計は450万円になりました。ソフトウェアの価格は500万円ですから、残りは50万円しかありません。
そうすると、毎年の償却限度額は計算上500万円÷5年=100万円であっても、償却費は資産の取得価額以上はできませんから
・4年目 普通償却費 50万円 累計 500万円
となります。この4年目で取得価額の500万円は全部費用化されますから、翌年の5年目は当然ながら、もう償却費は計上できません。
・5年目 普通償却費 0円
つまり、減価償却費は資産の取得価額を一定期間にわたって「費用化」する手段であって、どんなにがんばっても取得価額以上のものを費用化することはできません。
ですから、「特別償却」の効果は初年度に限られます。その後の償却費は、普通償却だけの場合に比べて少なくなります。つまり、通算してみれば
結果は同じ
になってしまうというわけです。
■税金を直接減らすことができる「税額控除」
そこで登場するのが
税額控除
です。減価償却が利益を少なくする制度であったのに対し、こちらは税額そのものを控除するーすなわち、本来支払うべき税金を減らすことができる制度です。
先ほどの例でお話しすると
ソフトウェアの取得価額500万円×7%=35万円
分だけ税額を減らすことができます。
(注)ただし、控除額は法人税額の20%を超えることはできません
たとえば、償却費計上前の会社の利益が2,000万円で、ソフトウェアの普通償却費が100万円の場合、差引利益は1,900万円になります。この利益に対する法人税等は
約601万円
となります。法人税等というのは法人税と事業税、それに県民税と市民税を加えたものをいいます。
しかし、ここで税額控除の適用を受けると、法人税等の金額は
約560万円
となります。
税金は全部で41万円安くなりました。最初に計算した控除額は35万円でしたから、6万円の差額が生じていますね。
■特別償却と税額控除は結局どちらが得なのか?
実は、法人税以外の地方法人税、県民税、市民税は税額控除額を差し引いた後の法人税額に一定の税率をかけて計算されるために、このような差額となってあらわれるというわけです。
同じ条件で税額控除を受けずに、特別償却を行った場合、法人税等は
約546万円
となります。ですから、初年度だけに限れば、節税効果は特別償却が1番大きくなります。
しかし、先ほど書いた様に、耐用年数の5年を経過した場合、税負担は普通償却だけの場合も普通償却にプラス特別償却をした場合も、結果は同じです。
その点、税額控除は償却費とは別に直接、税額を減らすことができますから、通算してみれば節税効果が一番高いのは税額控除ということになります。
特別償却のメリットは、資産を購入した年度に臨時的に多額の利益が予想される場合は一番大きいといえるでしょう。
しかし、長い目で見れば税額控除を利用した方が一般的には有利。
要は、短期的な節税、果をねらうか、長期的な節税効果をねらうか―ということになろうかと思います。
会社の状況に応じて最適の選択はどちらなのか、その検討が必要だというわけですね。
特別償却と税額控除について詳しくお聞きになりたいと思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
にお問い合わせください。
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