節税と社員旅行~10万円の壁は本当か?
2025年06月16日節税ブログ その132
●節税と社員旅行~10万円の壁は本当か?
■決算月近くに社員旅行を企画する理由
「今期は思ったより利益が出そうだから、社員旅行でもどうだろうか?」
年度末が近づくと、こんな話題が社内で出ることがあります。旅行ということで社員に還元しつつ、会社の費用として計上できれば一石二鳥。そんな考えから、社員旅行を“節税策”として検討する経営者の方は少なくありません。
私も、節税対策の4つのパターンのうち「お金が出ていく節税対策」としてお話しすることがよくありますが、社員旅行はまさにその典型例のひとつです。
■税務上、社員旅行はどこまで認められるか?
社員旅行に係る費用を会社の経費として計上する場合、本来は「現物給与」として源泉徴収の対象になりますが、税務上、一定の条件を満たすことで単純経費として計上することが認められています。その条件とは、次の2つです。
- 旅行期間が4泊5日以内であること(※海外旅行の場合は現地滞在日数)
- 全社員の50%以上が参加していること
この基準は国税庁の法令解釈通達として公開されており、制度的にも明確です。
■「10万円以下なら大丈夫」は本当か?
ところが、よく話題に上がるのが「一人あたり10万円以下ならセーフ」という話です。ネット上でもよく見かけますが、実はこの金額、法令にも通達にも明記されていません。
その出どころは、国税庁の「タックスアンサー」に掲載されている事例から読み取ることになります。以下はその具体的な事例です。
【事例1】
– 旅行:3泊4日
– 費用:15万円(うち会社負担7万円)
– 参加率:100%
→ 非課税
【事例2】
– 旅行:4泊5日
– 費用:25万円(うち会社負担10万円)
– 参加率:100%
→ 非課税
【事例3】
– 旅行:5泊6日
– 費用:30万円(うち会社負担15万円)
– 参加率:50%
→ 課税対象
一見してわかるのは、非課税扱いとなった【事例1】と【事例2】では会社負担が10万円以下であるのに対し、【事例3】では10万円を超えており、かつ旅行日数が要件を満たしていない点です。
つまり、「10万円以下ならOK」というのは、あくまで“目安”として広まっているにすぎないのです。要するに明確な線引きがあるわけではないものの、金額が大きくなると税務署側も「単純経費とは言い難い」と判断する可能性が高くなるということだろうと思います。
■判断のよりどころは「社会通念」
税務上の考え方には、「社会通念上一般に行われているかどうか」という基準があります。
「社会通念」とは要するに、「常識的に考えてちょっとおかしくないか?」ということです。で、この場合の「常識」は税務署職員の「常識」です。だから、どうしても経営者側の「常識」とはズレが生じることがあります。
話はやっかいです。
■まとめ:企画時には金額と日数に注意を
以上のことから、社員旅行を「節税」の一環として検討する際には、
– 旅行期間は4泊5日以内に
– 参加率は50%以上に
– 一人当たりの会社負担額はおおむね10万円以下に
といった点に配慮しておくことをおすすめします。もちろん、金額は10万円を少しでも超えたら即アウトというわけではないでしょうが、それこそ会社としての「常識」を明確にしておくことは、リスクを避けるうえで非常に大切だと考えます。
制度の趣旨をふまえつつ、社員にとっても会社にとっても気持ちの良い旅行になるよう、計画段階から税務上の要件もしっかりと把握しておくことをおすすします。
社員旅行はどこまでだったら税務上OKか?・・・とお悩みでしたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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