節税とグレーゾーン~正しいかどうかの判断は誰がする
2025年02月22日節税ブログ その128
●節税とグレーゾーン~正しいかどうかの判断は誰がする
■経費計上のむずかしさ
経費を計上するときに税務上の要件を満たしているかどうかは「支出の内容」と「支出した金額」の2つの点で考える必要があります。
例えば、会社の従業員や役員に給与が支払われている場合、税務調査で先ず、調査官が注目するのは
・その「人」が本当に実在しているかどうか?
・実在はしていても、実際に会社の業務に従事しているかどうか?
・業務に従事はしていても、じゃあ、実際にどんな仕事をしているか
この3点です。
■金額決定は悩ましい?
実在していなければ、完全にアウトです。単に人件費の額が経費に認められないだけではなく、「重加算税」という重いペナルティをかけられる可能性もあります。
また、実在はしているけれども、実際、会社の業務にまったく従事していない場合も同様です。こちらも「重加算税」の対象となります。
もちろん、最後の業務の内容自体も重要です。単に名目的なものなのかどうか、週に何日、あるいは何時間業務に従事しているかどうか、ここら辺も税務調査ではしっかりと見られます。
3つの注目点のうち、最初のふたつは「架空人件費」ということでハッキリしていますね。むずかしいのは業務には従事している、だけど、「この支給額はどうなんだ?」という場合です。つまり
金額が適正かどうか?
という問題です。
■適正金額ってどう決めたらいいの?
例えば、社長の奥さんに経理業務を担当してもらっているという場合、給与はいくらまでであれば経費として認められるのでしょうか?
・15万円?
・30万円?
・50万円?
もちろん、税法に具体的な人件費の上限金額が書いてあるわけではありません。これは、業務の内容自体はもちろん、会社の収益や他の従業員の給与とのバランスなどを考慮して判断されるためです。
とはいえ、何を基準に適正な金額を決めればよいのでしょうか?
■「社会通念」という基準
ここで重要なのが「社会通念」という考え方です。税法ではよくこの「社会通念」という言い方が出てきます。非常にザックリとした言い方をすれば、「常識的に考えて妥当な範囲かどうか」ということですね。
例えば、社長の奥さんに給与を支払う場合、次のように考えてみてください。
同じ仕事を奥さんではなく第三者に払うとしたらいくら払いますか?
この質問を自分自身にしてみることで、心理的なバイアスを排除して、適正な金額を考える助けになるのではないでしょうか。
ある本に社会通念について次のような説明がありました。
社会通念という言葉は、国税の用語と考えていい。簡単に言うと「ぜいたくをしているかどうか」が基準になる。さらに言えば、国税職員が「ぜいたくだ」と感じたら、それはぜいたくなのだ」
(『Facebookで節税する方法』税理士 正鬼晋太郎 他共著、アスペクト、41頁)
つまり、社会通念の判断は、実際は個々の税務調査官がどう感じるか-に大きく依拠しているというわけですね。
■税務調査で奥さんの給与が「高すぎる」と思われたら
では、税務調査が入って、奥さんの給与について調査官に「これはちょっと高すぎるんじゃないか」って思われたとします。
たとえば、社長が奥さんに月額50万円の給与を払っていて、でも調査官は「社会通念に照らしてこれは高い、いいとこ30万円だろう」と判断をして
なので、社長、 差額の20万円は否認します
なんて言うかというと、そんなことは当然ながらありません。
調査官がたとえそう思ったとしても、まずは上司にそのことを報告し、署内で時間をかけて検討した結果、奥さんに支払う給与の適正額をその根拠と共に具体的に提示する必要があります、この作業はなかなか大変です。
だから、身内に支払う給与の額の決定は納税者、税務当局の双方にとって大変なのです。
税務の世界にはこのように「いくらまでだったら費用に認められるか」がハッキリとしないグレーゾーンがいっぱいあります。当然、それはひとつひとつのことについて税務当局にキッチリと「枠」をはめることが不可能だからです。税を課す側からすれば「社会通念」というホワ~っとしたものでしか規制できないのです。
ですから、「適正額」決定の主導権は基本的に納税者側にあると考えるべきなのです。
社会通念に照らして適正かどうか・・・と判断に迷われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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