節税と交際費~「人脈を広げるため」という理由はアリかナシか?
2024年07月24日節税ブログ その121
●節税と交際費~「人脈を広げるため」という理由はアリかナシか?
■裁判で取り上げられたふたつの争点
交際費は事業規模の大小や業種の別にかかわらず、たいていの会社・事業で見られる費用のひとつですね。
今日のお話は、その交際費に係る判例(令和5年5月12日 東京地方裁判所)の紹介で、争点は
・交際費の費用計上は接待した相手とのその接待後の結びつきまで問われるべきか?
・「人脈を広げるため」という理由はアリかナシか?
という2点です。
■接待後の結びつきまで問われても・・・
先ず、最初の「接待した相手とのその接待後の結びつきまで問われるべきか?」という点について、税務当局は
「法人が支出した個別の飲食等に係る接待交際と、その後、当該法人と接待交際の相手方との間で行われた個別的具体的な取引・契約等との厳密な結び付きが認められない限り、業務との関連性が認められない」
という認識を示したようですが、これは
「中小法人損金算入特例において年800万円の定額控除限度額が認められていることや、現実に行われている企業の営業・取引活動の実態にそぐわないものであるといわざるを得ない」
ということで、会社側の主張が認められています。
しかし、これはもうあたり前の話で、ある会社が自分のお客さんになってくれそうだからということで接待したものの、最終的に話はうまくいかなかった場合(現実にはそういう場合の方が多いはずです)に、それではすでに支払ったその費用は交際費とはなりませんよ-というのであれば、まさに「現実に行われている企業の営業・取引活動の実態にそぐわない」ものとなってしまいます。
税務当局がそういった見解を持ち出してきたこと自体、驚きですが、率直に言って、一度でも「商売」をやったことがある人なら、普通、そんなことは言わんだろうーと思ってしまいます。
さて、次は2番目の争点です。
■「人脈を広げる」ことの実際の意味
会社側は「人脈を広げる」ために支出したのだから、交際費として処理したのですが、税務当局はその処理をそういう
抽象的な理由
では交際費に認めるわけにはいかないという判断をし、司法もその判断を良しとしました。
この「人脈を広げる」ということについては「様々な者と飲食を通して交流し」という言い方が判決分の中にあります。
ただし、それ以上のどういう人を接待し、そこでどういう話が交わされたのか、また、そもそもその接待の相手とはどういうきっかけで知り合ったのか―といったことが明確ではありません。
ですから、なんともコメントのしようがないのですが、とはいえ「「人脈を広げる」目的の支出がすべて交際費として認められないのか―というと、それは少し違っているような気がします。
たとえば、通いなれたスナックに社長ひとりが行って、そこにたまたま居合わせたお客さんと仕事の話をしましたーというのが交際費として認められるかというと、これはさすがに無理だろうなとは思います。
なぜなら、交際費は税務上
「その得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう」
となっているからです。スナックにたまたま居合わせたお客さんは、どう考えても
事業に関係ある者等
とはみなされないと思います。
■事業に関係のある者等の「等」とは
しかし、一方でたとえば、まだ会社を設立したばかりの経営者で、異業種交流会その他に積極的に参加して、今はとにかく名刺を配りまくるといった状況で、その中からめぼしい人を選んで接待しました-という場合はどうでしょうか?
今は人脈を広げることを第一に考えて事業活動しています-という経営者は多いはずです。そういう場合まで「人脈を広げる」ための接待費は
抽象的だからダメ
だということにはならないのではないでしょうか。事業に関係ある者等とは、現に事業に関係のある者だけではなく、あくまで「等」なのです。
何とかこの人と商売やっていきたい、やっていけたらいいなと考える人はその「等」に含まれるのではないでしょうか。
ただいずれにしろ、接待の相手がどういう人で、どういう目的で接待を行ったかは、証拠資料と共に日頃から明確にしておく必要はあると思います。
後で思い起こして「え~っと、あの人はどういう人だったっけ」では認められるものも認められなくなってしまいます。
交際費についてじっくりと話を聞いてみたいと思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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