節税と分社化~分社化のメリットはどこまで本当か?
2023年08月25日節税ブログ その110
●節税と分社化~分社化のメリットはどこまで本当か?
■分社化の4つのメリット
ひとつの会社をふたつ以上に分けることを分社化といいますが、分社化のメリットとしては次の4つがよくあげられます。
(1)法人税等の節税効果
(2)消費税が2年間免除される
(3)費用に認められる交際費の額が増える
(4)退職金の支給が可能になる
一番よく語られるのは(1)の法人税等の節税効果です。
■法人税等はなぜ、安くなるのか?
たとえば、法人にかかる税金のうち、最も代表的な税金である法人税は資本金1億円以下の中小企業の場合
・年間所得800万円以下の部分 15.00%
・年間所得800万円超の部分 23.20%
という2段階の税率で計算されます。
ですから、売上から仕入や人件費を引いた利益が2千万円の会社の場合、法人税は
800万円×15.00%=120万円
1,200万円×23.20%=278万円 合計398万円
となります。しかしこの会社をふたつに分割して、それぞれの会社の利益がちょうど半分の1千万円になったとすると、1社あたりの法人税は
800万円×15.00%=120万円
200万円×23.20%= 46万円 合計166万円
となり2社合計で332万円ですから、先ほどの398万円と比べて約65万円法人税は安くなるというわけです。
法人税が安くなると、会社が払う事業税その他の税金も同時に安くなりますから、結果的には
993,740円
の節税効果が生まれます。
節税効果は約百万円ですが、当然、事務処理や申告の手間は増えます。また、売上や費用をどう分けるかという問題もありますし、人の問題も発生します。
それらの問題解決のための労力と節税効果のウマ味をトータルにどうとらえるかーということになると思います。
■消費税のメリットはむずかしくなった?
ふたつ目は分社後にできた会社は2年間消費税が免除されるというメリットです。
2023年10月から、いわゆるインボイス制度がスタートしますが、設立から2事業年度は基本的に消費税が免除されるというルールそのものは変りません。
ただし、インボイスの登録をしていない会社の発行する請求書や領収書には課税仕入れのための要件である登録番号が記載できませんから、取引先はせっかく新会社にお金を払っても、それを課税仕入れにできないというデメリットを負うことになります
そうなると、得意先から取引を断られる可能性が出てきます。このため
じゃあ、最初からインボイスのための登録をして消費税の課税事業者になっておこう
という選択をせざるを得ないことにもなるというわけです。
だから、ふたつ目のメリットは状況次第ということになります。
■交際費は本当にメリットたりえるか?
3つめは費用に認められる交際費の額が増えるというメリットです。
交際費は、中小企業の場合、年間800万円までであれば費用に認められます。だから、会社をふたつに分ければ、2社合計で1,600万円まで費用計上のワクが広がるというメリットですが、じゃあ、はたして中小企業で本当に年間1,600万円ものの交際費を使うことが現実的か、あるいは、支出に見合うだけの効果が期待できるかというと、もちろん、これは会社の規模や状況次第ですが、少なくともあまり一般的とはいえないのではないでしょうか。
■退職金のメリット
最後は退職金の支給が2社で可能になるという点です。
退職金の支給は代表者以外の役員や使用人をいったん分社前の法人を退職させた上で、分社後の法人に受け入れるという方法もあれば、分社前の法人で代表に退職金を支給し、分社後の法人では相続のタイミングで死亡退職金を支給するーなどの方法が考えられます。
ただし、いずれの方法もタイミングや役員の状況次第で、どの法人でも使える方法というわけではありません。
さて、分社化による節税効果は色々とむずかしい面があるとはいえ、使い方によってはやはり有効であると思います。
社長の会社でもぜひ、一度検討してみられてはいかがでしょうか。
分社化はメリット・デメリットについてもっと詳しくお聞きなりたい場合は
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さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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