登録事業者の登録はした方がいい?しない方がいい?
2021年10月25日消費税改正ブログ その4
●登録事業者の登録はした方がいい?しない方がいい?
■登録事業者の登録がいよいよスタートしました
消費税の新しい制度が令和5年10月1日からスタートしますが、そのためには、あらかじめ、税務署に登録業者となるための申請書の提出が必要で、その登録が令和3年10月1日からすでにスタートしています。
登録の期限は令和5年3月31日までですから、まだまだ、時間はありますし、もともと
登録自体は任意で、決して強制ではありません
しかし、登録しておかないと、令和5年10月1日以降は消費税の課税事業者としての正式の請求書(これを「適格請求書等」といいます)を発行してはいけないことになっています。
登録事業者の登録は個人事業者であれ、法人であれ、どちらでも可能で、手続き自体は登録申請書用紙に住所、氏名・名称を記載する他は、申請時点で課税事業者か免税事業者のいずれかにチェックマークを入れるぐらいで、特にややこしいことはありません。また、申請後に登録が拒否されるということも通常はありません。
登録自体は任意だけれど、登録しないと、いわゆる「適格請求書等」も提出できないし、手続き自体むずかしくないのであれば、多くの法人、事業者が
じゃあ、先ずは登録だけしておこう
となるはずです。しかし、実際には、この判断が案外むずかしいケースがあります。
というわけで、以下のケース別に、それぞれの判断が実際どうなるかを見ていくことにしましょう。
■登録すべきケースとは
≪ケース1≫
今現在すでに消費税の課税事業者で、今後も、ずっと課税事業者であり続けると考えられる事業者
このケースでは登録は必ずしておくべきです。
登録をしてもしなくても、税額が増えたり、減ったりするわけではありませんが、登録をしておかないと、請求書を受け取った側が、その金額を課税仕入れにできませんから
もう、おたくとは取引きできない
ということになってしまいます。ですから、登録は必ずやっておくべきです。
■登録すべきか否かで悩むケース
≪ケース2≫
今現在は消費税の課税事業者だが、基準期間(原則2年前)の課税売上高が、納税義務が発生する年間売上高1千万円を超したり、越さなかったり、その線上で年度ごとに上下動している事業者
消費税の納税義務は、2年前の事業年度(これを「基準期間」といいます)の売上高で判断されます。
たとえば
令和元年(2019年)の課税売上高が900万円だと、1千万円以下ということで令和3年(2021年)は課税売上高がいくらあろうと消費税を納める義務はありません。
逆に、令和元年(2019年)の課税売上高が1千万円を1円でも超えていれば、令和3年(2021年)は課税売上が100万円しかなくても、消費税を納める義務が発生します
ですから、基準期間の課税売上高が毎年1千万円の線を越えたり、越えなかったりすると、年度ごとに消費税の納税義務が発生したり、しなかったりします。
では、そういう事業者が登録事業者の登録をするとどうなるかというと
1.基準期間の課税売上高に関係なく、常に消費税の課税事業者になってしまう
2.反対に課税事業者としての正式な請求書である「適格請求書」を出すことができるために取引から除外されることがなくなる
ということになります。
■登録しない場合のデメリットがデメリットにならない場合もある
逆に、登録をしない場合は上記のメリットとデメリットが逆転します。
つまり、基準期間の課税売上高が1千万円未満であれば消費税を納める義務はないかわりに、取引から除外されるデメリットが出てくるというわけです。
ということは、そもそも取引から除外される可能性のない職種であれば、後者のデメリットは考えなくてもよいということになります。
取引から除外される可能性のない職種とは、お客様が不特定多数の一般消費者で、通常、請求書を出すことがなく、また、領収書は出すけれど、その領収書をもらった側が、これを課税仕入れとして処理することがない職種ということになります。
ということは、飲食店や小売業、美容室、理容室といった職種がそれに該当します。
ただし、飲食店でも事業者が接待に使う場合は、当然、領収書を要求されるはずです。ところが、その時に、その飲食店が登録事業者の登録をしていないと、そのお店を利用した事業者が受け取った領主書では課税仕入れの処理ができないことになります。
じゃあ、あの店を利用するのはもうやめておこう
ということになってしまう可能性があるということです。
ですから、法人や個人事業者が接待等に使う機会が多い飲食店では、登録すべきか否かの判断に頭を悩ませることが増えるかも知れません。
■当面、課税事業者になることが予想されないケースでも・・・
≪ケース3≫
今現在、消費税の免税業者で、当分の間、課税事業者となる予定がない事業者
ケース2と違って年度ごとの判断に悩む必要はありませんが、ケース3の場合もケース2と同様、これまでの取引関係を維持するために、登録業者となって消費税を納めるデメリットを受け入れるか否かの判断が必要になってきます。
くり返しになりますが、登録事業者の登録はあくまで任意です。それだけに、特にケース2とケース3に該当する方たちは、登録するか否かの判断について、これからしっかりとしたシミュレーションが求められることと思います。
登録の期限は令和5年3月31日までですから、あと1年半を切りました。
さかもと税理士事務所はみなさんの判断をしっかりと手助けしてまいります。
登録業者になるべきか否かについて詳しく聞きたいと思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
にお問い合わせください。
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