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節税と必要経費~不動産関連図書費はどこまで認められるのか?

2021年05月15日

節税ブログ その76

●節税と必要経費~不動産関連図書費はどこまで認められるのか?

 

ある裁決例から見た必要経費とは

 

今日は、不動産関連図書費がどこまで経費として認められるのか―について、ある裁決(注1)例を中心にお話をしてみたいと思います。

(注1)「裁決」とは国税不服審判所という、いわば裁判のひとつ手前に行なわれる行政機関による判断のことを言います。

 

必要経費に計上できる金額については、国税庁の「やさしい必要経費の知識」(タックスアンサー№2210)に以下の様に書いてあります。これは所得税法の第37条をやさしく読みくだいたものです。

 

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

 

今日のテーマである「不動産関連図書費」は、もちろん、一般には、上の(2)「一般管理費その他業務上の費用」に分類される費用です。

 

さて、その裁決例ですが、納税者は不動産賃貸業を営んでおり、図書費及び新聞代・テレビ視聴料として

 

平成25年 約19万5千円

平成26年 約11万1千円

平成27年 約03万5千円

 

を必要経費に計上して申告を行いました。

 

しかし、国税不服審判所は平成30年9月12日にこれらに対し一部をのぞいて経費には計上できないと判断しました。

 

関連図書に係るあまりに「一般論」的見方

 

結論からいうと、私はここで示された審判所の判断は、非常に「おかしな」判断であると思います。

 

図書費に計上された本の主な内容は次の通りです。

 

1.一級建築士、技術士等の資格取得のための本

2.不動産賃貸経営に関する本

3住まいのリフォームに関する本

4.会社経営に関する本

5.住宅建築のノウハウなど建築工事に関する本

 

そして、これらの本に対して国税不服審判所は、次の様に判断しました。

 

1一級建築士、技術士等の資格取得のための本

①.先ず、一般に専門資格を取得する目的を客観的にみると、有資格者という一定の社会的な地位を得たり、特定の職業への従事を可能にしたりするところにある。

②.また、そこから得られる知識が、業務に間接的に有効、有用であっても、客観的にみると、その主たる目的は新しい地位や職業を獲得するための教育費であり、家事費と認められる。

 

≪結論≫

よって、1は必要経費に算入することはできない。

 

≪私の個人的見解≫

裁決書には、裁決に先立つ税務調査において、税務署の調査官が図書の具体的内容の説明を納税者に複数回求めたが、これに対し納税者が必要経費に該当することを裏付ける資料の提出や具体的な説明を行わなかったという説明があります。

 

ですから、納税者が資料の提出や具体的な説明を行っていたら、結果は違ったものになった可能性はあります。

ただ、それは別に考えるにしても、一級建築士、技術士等の資格取得のための本であっても、それは何も「専門資格を取得する」こと以外に役に立たないわけではなく、ある知識を体系的に学んで、それを業務の役に立てることは十分に可能です。

 

それを①で、いわゆる「資格本」の目的を「社会的な地位を得たり、特定の職業への従事を可能にしたりするところにある」と一般論だけで断じるのは、いささか一方的すぎると思います。

 

特に②において、「そこから得られる知識が、業務に間接的に有効、有用であっても」としながらも、「客観的にみると、その主たる目的は新しい地位や職業を獲得するための教育費であり、家事費と認められる」と結論付けるあたりは首をかしげざるをえません。

 

「業務に間接的に有効、有用」であったら、なぜ、それが「客観的」にみて、教育費や家事費とされる必要があるのでしょうか。

 

直接要した費用の額とは何か?

 

2.不動産賃貸経営、3.住まいのリフォーム、4.会社経営、5.住宅建築上のノウハウなどの建築工事に関する本

これらの書籍については以下の様な判断となっています。

①.納税者は賃貸物件の維持管理に際して、IHクッキングヒーター等の備品やコンクリートドリル、ひび割れ用塗布剤などを購入して備品の交換や補修等の作業を行っていることが認められる。

②.したがって、一部は納税者が行った各種の作業に直接関係し、かつ、業務の遂行上必要な費用と認められるものの、それ以外は不動産貸付業に何らかの関係がある書籍であることは認められるものの、客観的にみて業務に直接関係し、かつ、業務の遂行上必要な費用であるとは認められない。

 

≪結論≫

公表されている資料では本のタイトルや個々の内容が明らかにされていないため、どの本が②の「一部」に該当し、また「それ以外」に該当するのかがわかりません。

 

しかし、国税不服審判所は結果的に、「一部」は必要軽として認めたものの、「それ以外」については「不動産貸付業に何らかの関係がある書籍であることは認められるものの、客観的にみて業務に直接関係し、かつ、業務の遂行上必要な費用であるとは認められない」として「必要経費に算入することはできない」と判断したのです。

 

≪私の個人的見解≫

重要な点は

イ)「不動産貸付業に何らかの関係がある書籍であることは認められる」とした  

ロ)にもかかわらず、「客観的にみて業務に直接関係し、かつ、業務の遂行上必要な費用であるとは認められない」

 

とした点です。

 

最初に書いた様に、必要経費に計上できる支出については所得税法の第37条で次の様に書かれています。

 

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

 

(1)の売上原価は「直接」要した費用となっている一方で、(2)の「販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」は「直接」要したとはなっていません。

 

しかし、国税不服審判所は(2)についても、業務に直接関係しているか否かを求め、検討した結果、直接関係していないから、必要経費に算入することはできないと判断したのです。

 

■直接的な関係性についての最高裁の決定

 

ただし、この直接性については、平成24年9月に、弁護士の必要経費をめぐる裁判で、東京高裁が次の様に述べて、国側の主張を退けました。

 

「事業の業務と直接関係を持つことを求めると解釈する根拠は見当たらず、「直接」という文言の意味も必ずしも明らかでない」

 

なお、この高裁の判決は平成26年に最高裁で確定しています。

 

くり返しになりますが、公表されている資料では本のタイトルや個々の内容が明らかにされていないため、上記2から5までの本のうちどれが必要経費として認められなかったかは正確にはわかりません。

 

ただし、裁決書を見ると、認められたのは3の住まいのリフォームに係る本のみで、その他は「不動産貸付業に何らかの関係がある書籍であることは認められる」ものの、納税者の業務に「直接」関係しないとして、必要経費に算入できないと判断された様に読めます。

 

しかし、もしその通りだとしたら

 

2.不動産賃貸経営に関する本 

この様な本の経費性が否定された理由は全く不明です。現に審判所は、その他の本についても「不動産貸付業に何らかの関係がある書籍であることは認められる」と述べているのですから。

 

4.会社経営に関する本      

個人事業者ですから、会社経営は関係ないと言われればそうですが、同じ取引であっても個人と法人とでは会計上、税務上の取り扱いが異なることは珍しくありません。それらを学ぶことは個人経営にとっても役に立つことは多いはずです。

 

5.住宅建築上のノウハウなどの建築工事に関する本

不動産経営のためには建築のノウハウを学ぶことは、建物の耐久性や劣化の具合、材質の違いによる修繕費の発生具合等を知ることで、経営そのものに役立つ部分は決して少なくないはずです。

 

今日、お話した国側の判断は、繰り返しになりますが、私としてはとうてい納得できるものではありません。

 

しかし、国側がそのような判断をしたことはまぎれもない事実ですし、同様の判断がまた他のところでもくだされる可能性は十分に予想されます。

 

ですから、ご自分がされる支出について、「これは経費に認められるだろうか」と少しでも思われるようなことがあったら、業務との関連性、必要性について十分な説明ができるよう“論理”を組み立て、そのための証拠を準備しておくことを忘れないでいただきたいと思います。

 

必要経費かどうかの最終的な判断は事業主又は社長が行うものーと私は思っています。

 

必要経費について詳しくお聞きになりたいと思われたら

「生涯」税金コンサルタント

さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足

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