節税と役員報酬~役員報酬の適正額はどう決める
2019年06月27日節税ブログ その36
●節税と役員報酬~役員報酬の適正額はどう決める
■役員報酬額の決定は悩ましい
役員報酬をどう決めるか?
これは、経営者はもちろん、税理士にとっても大変悩ましい問題です。
税務上、役員報酬で問題になるのは
・過大役員報酬かどうか?
・定期同額給与であるかどうか?
・毎月支給する役員報酬の金額を事業年度開始日以後3ヶ月以内に決めなければならない。
という3点です。
しかし、本当にむずかしいのは社長個人と法人の両方にとって一番適正な役員報酬をどう決めるかということです。
■役員報酬の落としどころ
・役員報酬を高くすれば会社の経費が増えて、法人税等の負担は減少する。
・一方で、社長個人の税負担(所得税・住民税)は増える。
・また、社会保険料の負担(個人と会社の両方)も増える
ということになるので、会社と個人の負担をトータルにとらえて、どこに落としどころを持って行くかという判断をしなければいけません。
当然、役員報酬は会社の利益の中から払いますから、先ずは
いくらまでなら払えるか
ということがあるし、同時に家族構成などから
いくら必要か
という点も考慮しなければいけません。
■いくらまで払えるか—の計算方法
この様に、役員報酬を決めるためには色々な点を慎重に検討する必要がありますが、現在の会社の損益状況でいくらまでなら役員報酬を払えるか-という点については以下の様な方法で計算できます。
役員報酬を決める際のひとつの指標としてみて下さい。
仮に以下の様な会社があったとします。
A社の損益計算書
(単位:千円)
売上高 | 300,000 |
売上原価 | 90,000 |
粗利益 | 210,000 |
社員給与 | 90,000 |
その他経費 | 75,000 |
経費計 | 165,000 |
税引前利益 | 45,000 |
法人税等 | 13,500 |
税引後利益 | 31,500 |
この損益計算書には役員報酬が計上されていません。A社は税引前利益が45,000千円ありますから、役員報酬は最大45,000千円支出できますが、そうすると、税引後の利益は0になってしまいます。
■借入金は税引後の利益から返済する必要がある
もし、A社が借入金を年間10,000千円返済する必要があるとしたら、借入金の返済ができなくなってしまいます。
返済資金として税引後の利益が10,000千円必要だということは、法人税等の税率を30%とした場合、
10,000千円÷(1-30%)=14,285千円
の税引き前利益が必要だということです。
A社の社員給与とその他の経費の合計(全て固定費とします)は165,000千円ですが、これに役員報酬をプラスしたものが本来の経費で、これに先ほどの税引前利益14,285千円を足したものが必要な粗利益ということになります。
■何を固定費とし、何を変動費とするかで役員報酬は決まる
ここで社長が役員報酬として年間1千万円は必要だと考えたとすると、必要な粗利益は
税引前利益 経費合計 粗利益
14,285千円+(165,000千円+10,000千円)=189,285千円
ということになります。A社の粗利益率は70%(変動費率30%)ですから逆算すると
189,285千円÷70%=270,407千円
が必要な売上高ということになります。大事なのは何を固定費とし、何を変動費とするかということです。
必要資金10,000千円の状態で、役員報酬を45,000千円払うとすると、売上高は約20,000千円増えて320,408千円必要になります。
現在の売上高の範囲で出せる役員報酬の最高額は約30,000千円という計算になります。
社長の会社の役員報酬を決める際のひとつの指標として、ぜひ、以上の試算をやられてみてはいかがでしょうか。
役員報酬額をどう決定したらわからない・・と思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
にお問い合わせください。
〒819-0002 福岡市早良西区姪の浜4-22-50クレインタートル弐番館801
――――― お問合せ先は ―――――
TEL092-892-3888/FAX092-892-3889
前のブログ記事へ | 次のブログ記事へ |