節税と旅費日当~日当は社会保険料の算定に含まれるか否か?

節税と旅費日当~日当は社会保険料の算定に含まれるか否か?

今回のテーマは「旅費日当(出張手当)は社会保険料の計算(算定基礎)に含まれるのか、含まれないのか」です。

ネットで検索すると、「含まれないから社会保険料の節約になるよ!」という意見がある一方で、「いやいや、年金事務所の調査で指摘されて、結局含まれることになったよ…」なんていう怖い話も耳にします。

「一体どっちの意見が正しいの?」と混乱してしまいますね。

結論からお伝えすると

適切な要件をしっかり満たして支給されている旅費日当は、社会保険料の算定基礎には含まれない

です。

では、なぜ「含まれる」という反対の意見が生まれてしまうのでしょうか?その理由と、年金事務所の調査が入っても絶対に白旗を上げずに済む「正しい運用の境界線」をじっくり丁寧に解説していきますね。

そもそも社会保険の「報酬」ってなんだろう?(法律のお話)

まず、基本となる法律のルールからお話しします。ちょっと硬い言葉になりますが、ここがすべての土台になるのでお付き合いください。

健康保険法や厚生年金保険法では、社会保険料の計算の元になるものを「報酬」と呼んでいます。法律にはこう書かれています。

賃金、給料、手当、賞与その他いかなる名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもの

ポイントは「労働の対償(たいしょう)」、つまり「働いてくれたことに対するお給料やご褒美」であるかどうかです。

じゃあ、出張のときにもらう「旅費日当」はどうでしょうか?

出張に行くと、普段のオフィス勤務とは違って、外出先でのちょっとした食事代、カフェでの打ち合わせ代、移動中の雑費など、どうしても自分のお財布から出ていく細かなお金が増えますね。日当は、こうした「出張に伴って増えてしまう個人の出費」を会社が補填してあげるために支給するものです。

つまり、日当は働いたことへのご褒美ではなく、「かかった経費を会社が代わりに精算してあげている(実費弁償)」という性質のものです。

そのため、国(行政)の通達でも「実費弁償的なものは報酬に含まない」と明確に決まっています。労働の対償ではないから、社会保険料の対象外。これが大原則です。

なぜ「含まれる」という誤解や意見が生まれるの?

大原則は「含まれない」なのに、どうして「含まれる」という意見が出てきてしまうのでしょうか。これには大きく分けて2つの原因があります。

原因①:「通勤手当」とゴチャゴチャになっている

これが一番多いカン違いです。同じ「移動にかかるお金」なので混同しやすいのですが、取扱いが真逆になります。

  • 通勤手当:毎日の通勤にかかる費用です。これは「会社で働くために、毎月決まって支給される手当」とみなされるため、法律上、社会保険料の計算に「含めなければならない」と決まっています。
  • 旅費日当:臨時的な業務出張のときだけ、その都度発生する費用の補填です。だから社会保険料に「含まれない」となります。

この2つを同じ「旅費」として一括りに考えてしまっているケースがとても多いんですね。

原因②:「名目だけの日当」で社会保険料を減らそうとする会社がある

「日当にすれば社会保険料がかからないんだ!」と知った一部の会社が、実態もないのに「出張手当」という名前をつけて、お給料の一部をすり替えて支給することがあります。

当然ですが、そんな「中身のないお給料隠し」はいずれ年金事務所に見抜かれて、「これは名目だけで、実質的にはお給料(報酬)ですね」となってしまうことだってあるというわけです。

つまり、「含まれるという意見」があるのは、ルールを無視した不適切な日当を支給して、年金事務所に否認されてしまったケースを指しているからなんですね。

給料に「含まれる日当」と「含まれない日当」の境界線

では、具体的にどんな運用がアウト(含まれる)で、どんな運用ならセーフ(含まれない)になるのでしょうか。

社会保険料算定の基礎に含まれるケース

・「毎月一律固定で3万円」を出張手当として支給している。

・規程はあるけれど、一般社員の日当が「1日5万円」など、明らかに高額すぎる。

社会保険料算定の基礎に含まれないケース

・規程に基づいて、「出張1回(1日)につき3,000円」を都度計算して支給し、報告書も残している。

要は

実態に合わせて、常識的な金額を、その都度計算して払っているか否か

ということですね。

年金事務所の調査に備えるための3つのポイント

① 出張旅費規程の作成

これがすべてのスタートラインです。就業規則の一部、または独立した規程として

・どんな場合に出張とみなすのか(例:片道○○km以上の場合等)

・役職ごとに日当はいくら支給するのか

といったことをきっちり決めておくことです

社会通念上、妥当な金額(相場)に設定すること

「うちは社長の日当を1日10万円にするぞ!」というのは、先ず、通用しません。要は、世間一般の相場(社会通念上の妥当な金額)に収める必要があるというわけです。

(といってもここが実際はむずかしいところですが・・・)

出張報告書や旅費精算書の保管(実態の証明)

「規程もあるし、金額も相場通り!」であっても、「本当にその日に出張へ行った証拠」がなければ意味がありません。

「いつ、どこへ、誰が、何の目的で行ったのか」を記録した出張報告書を必ずセットで保管してください。

訪問先とのメールのやり取りなども、出張の実態を証明する強力な武器になります。

旅費日当について詳しくお聞きになりたいと思われたら

「生涯」税金コンサルタント

さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足

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