節税とパーティー費用 ~税務署と世間の「常識」は意外と違う
2026年06月17日節税とパーティー費用 ~税務署と世間の「常識」は意外と違う?
こんにちは。税理士の坂本です。
今日は「税務上の社会通念」、つまり税務署が考える「常識」についてお話ししたいと思います。
「常識」の基準って人によって違う
税務の世界ではよく「社会通念」という言葉が出てきます。
簡単に言えば「社会常識」という意味ですね。
例えば、会社の社員さんが結婚することになって、会社からお祝い金を出すことになったとします。
さて、いくら渡すのが妥当でしょうか?
・5万円
・20万円
・100万円
皆さんはどう感じますか?
おそらく5万円なら、「まあ普通かな」と思う方が多いでしょう。
逆に100万円となると、「ちょっと出しすぎじゃない?」と感じる方がほとんどではないでしょうか。
では20万円はどうでしょう?
ここは意見が分かれるところだと思います。
「10万円くらいなら分かるけど、20万円はちょっと高いかな…」
そんな感覚を持つ方も多いでしょう。
実際には会社の規模や給与水準、業界の慣習によっても変わりますから、一概に線引きできるものではありません。
実際に裁判になった興味深い事例
平成29年4月、福岡地裁でこんな興味深い判決がありました。
ある会社が、日頃頑張ってくれている社員への感謝を込めて、ホテルの大宴会場で「感謝の集い」を開催しました。
内容は以下の通りです。
・従業員約1,000人が参加
・1人当たりの飲食費は約12,000円
・有名歌手を招いたコンサートも開催
・総額は2,100万円~2,700万円
総額だけを見るとかなり大きな金額ですが、参加人数で割ると1人当たり約2万円台の支出です。
会社はこれを福利厚生費として処理しました。
ところが税務署は、
「これは福利厚生費ではなく交際費だ」
と判断したのです。
福利厚生費と交際費では何が違うの?
ここが重要なポイントです。
福利厚生費であれば、基本的に全額が経費扱いになります。
一方で交際費になると、
資本金1億円以下の会社なら年間800万円を超える部分は経費になりません、
資本金が1億円を超える会社では1円も経費になりません。
つまり、それだけ会社の税負担は確実に増えてしまいます。
この会社も、福利厚生費として認められれば全額経費でしたが、交際費と判断されたことで経費から外される部分が生じました。
最終的には会社が勝訴
ただ、この話には続きがあります。
最終的に裁判所は会社側の主張を認めました。
つまり、この支出は福利厚生費として認められたのです。
しかし注目していただきたいのは、
税務署はいったん「これは常識を超えている」と判断した
という点です。
なぜ税務署は否認したのか?
税務署の理由はシンプルでした。
「通常要する費用を超えている」
というものです。
でも皆さんはどう思いますか?
場所は有名なリゾートホテルです。
そこで飲食やイベントを含めて1人当たり2万円台。
私はむしろ、
「思ったより安くすんだんだな」
という印象を受けます。
ところが税務署は、
「社会通念上、通常の福利厚生費とは言えない」
と判断したわけです。
税務上の「社会通念」とは何か
以前読んだ本の中に、こんな趣旨のことが書かれていました。
「税務上の社会通念とは、国税職員が考える社会通念である」
少々刺激的な表現ですが、ある意味で本質を突いていると思います。
もちろん、国税職員の感覚が世間から大きくズレているという意味ではありません。
ただ、人は誰でも長く所属している世界の価値観に影響されます。
会社経営者には経営者の常識があります。
税理士には税理士の常識があります。
そして国税職員には国税職員の常識があります。
だからこそ判断が分かれることがあるのです。
会社の常識と税務署の常識
私は、基本的に会社は会社の常識に従って経営すれば良いと思っています。
無理に税務署の顔色ばかりうかがう必要はありません。
しかし一方で、
「税務署はどう見るだろうか」
という視点も持っておく必要はあります。
なお、税務署と見解が食い違った場合、すぐに裁判になるわけではありません。
まずは国税不服審判所という行政機関で争うことになります。
実は今回ご紹介した事例も、裁判では会社が勝ちましたが、その前段階の国税不服審判所では会社側が負けていました。
その間の時間や労力、精神的な負担は相当なものだったはずです。
まとめ
税務の世界では、「社会通念」という言葉がしばしば登場します。
しかし、その社会通念は必ずしも経営者のみなさんが考える社会常識と同じとは限りません。
税務上の判断に迷ったときは、
「世間一般ではどう見えるか」
だけでなく、
「税務署はどう考えるだろうか」
という視点も持っておくことが大切です。
節税対策を進めるうえでも、この感覚はとても重要です。
税務上の「社会通念」について詳しくお聞きになりたいと思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
にお問い合わせください。
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