節税と資格取得費用~その資格取得の費用、本当に大丈夫?
2026年05月05日
節税ブログ その150
●節税と資格取得費用~その資格取得の費用、本当に大丈夫?
「資格取得費用って、会社で払えば全部経費になるんですよね?」と聞かれることが時々あります。
でも、実際にはそう単純ではありません。
資格というのは、本来は“個人の財産”と考えられています。つまり、本来は本人が自分自身で負担するべきものなんですね。
そのため、会社がその費用を負担すると、原則としては「給与」とみなされる可能性があります。
ところが、一定の条件を満たせば、“給与ではなく会社の必要経費”として認められるケースがあります。
今回は、税務上問題になりやすい「資格取得費用」について、実務的な視点からわかりやすく解説してみたいと思います。
■資格取得費用を経費にするための「3つの条件」
税務上の考え方は、所得税基本通達36-29の2に定められています。
簡単に言えば、
「会社の仕事に本当に必要な資格取得なら、給与課税しなくてもいいですよ」
という話です。
ただし、そのためには次の3つを満たしている必要があります。
■その1 業務上、本当に必要かどうか?
最初のポイントは、
「その資格、本当に仕事に必要なんですか?」
という点です。
たとえば、運送会社やタクシー会社が、従業員の運転免許取得費用を負担する。
これは誰が見ても業務上必要ですよね。
また、
「これから配送業務が増える予定だから、今のうちに免許を取ってもらう」
というケースも、通常は認められるでしょう。
実際に業務が始まってから、
「はい、今から免許取ってきて」
では遅いですからね。
■その2 職務に“直接”必要な知識・技術か?
ここが一番揉めやすいポイントです。
単に
「役に立つ」
では足りません。
税務署は、
「その人の仕事に直接必要なのか?」
を見ます。
たとえば同じ運転免許でも、
- 配送ドライバー
- 現場作業員
なら認められやすいでしょう。
しかし、
- 経理担当
- 総務担当
など、普段運転をしない社員の場合は、
「直接必要とは言えないのでは?」
という話になりやすいわけです。
■実際の税務調査であった話
これは、私が実際に税務調査で経験したケースです。
その会社は、大型機械の修理を行う同族会社でした。
問題になったのは、社長の親族でもある若い社員の自動車学校費用です。
税務調査官の主張はこうでした。
「免許はプライベートでも使える。
だから、職務に“直接”必要とは言えないのでは?」
確かに、一理あります。
でも、私はこう説明しました。
その若い社員は、まだ入社間もなく、修理技術も経験も十分ではありませんでした。
つまり、現場で彼が主に担っていた役割は、
- 先輩社員を現場まで送る
- 修理道具を運ぶ
- 長距離運転を担当する
ということだったんです。
つまり、“車を運転すること自体”が、その時点での彼の重要な職務だったわけです。
結果として、この主張は認められ、給与課税はされませんでした。
ただし――
これはあくまで、その会社の実態に基づいた判断です。
もし、その社員がベテランで、運転は皆で交代していただけなら、結果は違っていたかもしれません。
税務では、こういう「実態」がとても重要になってきます
■その3「費用として妥当か?」も重要
3つ目の条件は、
「その金額、常識的ですか?」
という話です。
通常の資格学校や講習会程度なら、問題になることは少ないでしょう。
ただし、注意が必要なのは、
“必要以上に豪華な内容”
になっているケースです。
たとえば、
- 英語が必要な会社だから
- 海外で英語研修を受けた
ここまではまだ理解できます。
しかし、
- 高級リゾートホテル滞在
- 観光中心のスケジュール
- 明らかに私的要素が強い
となると、
「それ、本当に業務目的ですか?」
と見られやすくなります。
特に最近は、
- 役員研修
- 海外視察
- 自己啓発系セミナー
などについて、税務署のチェックも厳しくなっています。
■「節税になる」だけで判断しないこと
資格取得費用は、うまく使えば会社の人材育成にもなりますし、節税にもつながります。
ただし、
- 業務との関連性
- 職務との直接性
- 金額の妥当性
この3つをきちんと説明できないと、税務調査で問題になることがあります。
特に同族会社では、
「社長個人のためでは?」
という視点で見られやすいので注意が必要です。
「会社で払えば全部経費になる」
ではなく、
なぜ会社負担なのかを説明できるか
ということが大変、重要です
資格取得費用や研修費の取り扱いは、
実はかなり“グレーゾーン”の多い分野です。
特に、
- 役員の資格取得
- MBAや大学院費用
- 海外研修
- 不動産・金融系資格
- AI・IT関連講座
などは、実態次第で判断が分かれることは決して少なくはありません。
税務上の安全性を考えながら、上手に制度を活用したいと思われたら、ぜひ専門家にご相談ください。
税務上の資格取得費用について詳しくお聞きになりたいと思われたら
「生涯」税金コンサルタント
さかもと税理士事務所 税理士・坂本千足
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